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もう行かないと

「私は死王に殺され、既に死んでいる。思い出した……。ここ数か月の間に、蘇ったのだ、アンデッドとして……」


「そんな! 嘘よね、お母さん!」


 千鶴の独白を聞き、有希が叫ぶ。


「すまない、有希。今までなんで思い出せなかったんだ。先ほど、全く意識が無かった。死王に操られていたんだ。今も頭が痛い……。もう時間は無いみたいだ……」


 千鶴は悲痛な面持ちを見せつつも、有希に笑顔を向ける。


「だが、おかげで最後に愛する娘に会えた。嬉しかったよ」


 その言葉を聞いた有希が、千鶴に抱き着いた。目には涙が溢れている。


「嫌よ! だって会ったばかりじゃない! これが終わったら、一緒に……」


「違和感があったのには気付いていたんだ。だけど、有希と一緒に居れることが嬉しくて、目を逸らしてた。私が有希と一緒に居たいと願ったから……ごめんね有希」


 千鶴の頬にも、涙が伝う。


「たとえ一時的でも、一緒に居れて嬉しかったよ。お母さん」


「有希、大好きよ。もう行かないと……体がもうあまり言うことを聞かないんだ。貴方達を襲う前に。だけど、最後に……人間を完全に操れる訳じゃないってことをあの馬鹿に教えてあげないとね」


 千鶴は最後に有希の額に軽くキスをすると、立ち上がる。その目は、レガシーを見つめていた。

 千鶴は魔力を足に込め、疾走する。


「ハハハ、飼い犬が飼い主に襲い掛かるか。少し躾が必要だな」


 レガシーは笑いながら、魔力を手に込める。千鶴の顔が歪む。頭が割れるような痛みが千鶴を襲う。


「人を完全に操るなんて、誰にもできないんだよ。死王」


 千鶴はレガシーへ距離を詰めるも、死王は余裕を崩さない。 


「下剋上か」


 千鶴は残りの魔力全てを刀に込める。


「居合・華断(はなのことわり)


 千鶴の刀が、鞘に戻される音と同時に、レガシーのスタッフの先が地面に落ちる。


「お前は人を舐めすぎだ。さよなら、皆。後は頼んだよ」


 千鶴は皆に別れの言葉を呟くと、その刀を自らの心臓に突き刺した。千鶴は血を吐きそのまま倒れ込む。そのまま静かに骨になった。


「エルメロイスタッフが壊されたか。敵ながら天晴(あっぱれ)。いや、本来味方なんだが。反魂の術はどんな強者も蘇られる便利な術だが、いかんせん強い者ほど言うことを聞かんな。それもまた一興か」


 破壊されたスタッフを見つめながら、レガシーは笑っていた。






「母さん……」


 千鶴の最後を見た有希は、怒りで歯を食いしばる。英斗は目の前で母を失った有希になんと声をかけていいか分からなかった。

 だが、有希は涙を拭いすぐさま立ち上がる。


「行くわよ、まだ終わっていない」


「ああ」


 英斗達はレガシーへ向かって走り始める。英斗の顔は怒りで染まっていた。体から闘気が溢れ出す。

 もうお互いの間合いといえるほど近づいた英斗は叫ぶ。


「人をもて遊びやがって! なんだと思っている!」


「ククク、俺は死を操る故、死王だ。死も、生も全ては俺の思うがままに。そして、少し遅かったな。神の(つるぎ)がやってきた」


 レガシーがそう言って、上を指さすとそこには二人の魔人が宙に浮いていた。尋常ではない魔力を全身に漲らせ、殺意に溢れている。黒い肌と、その角が人間でないことを示していた。


「また会ったな、人間。今日こそ殺してやる」


 サンドラは怒りを込めてそう言った。

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