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俺も捨てたもんじゃねえ

「ゴハッ!」


 これは流石に効いたのか、ディーンの口から鮮血が舞う。だが、その血走った目は死んでいない。怒りのまま、大剣を六郎に向かって、振り下ろした。その一撃で、六郎と、左腕と、左肩が消し飛ぶ。


「六郎!」


 英斗が叫ぶ。

 ディーンは膝をつく六郎の頭を鷲掴みにする。


「舐めた真似してくれるじゃないか……! これで終わりだ!」


 六郎は薄れゆく意識のまま、考える。


(これでも、勝てないのかよ……俺はあいつの仇もとれねえのか、なんで俺は生き返っちまったんだ……。けど英斗が居る……。あいつに任せればきっと……)


 六郎の心に諦め、の言葉がちらつき始める。だが、そんな六郎に届く声があった。


「おい、これはお前の復讐だろう! なんのために生き返ったんだ! その意味を考えろ!」


 英斗が叫んでいた。


(そうだ。これは神が、仇のために俺を生き返らせたんだ!)


 六郎は動く右腕で、バッグからライフルを取り出す。鎧の裂けめからディーンの左腕の肉体部分に連射した。


 血がはじけ飛び、六郎を掴む力が緩んだ。その隙に渾身の蹴りを放ち、拘束から逃れる。そして地面に落ちた自らの剣を拾うと、渾身の力でディーンに振り下ろす。


 ディーンも大剣でその一刀に応える。二つの剣戟が交差し、綺麗な金属音が静かな部屋に響くと同時に、剣が砕ける音がした。


 ディーンの大剣が砕けたのだ。


「なぜだ!」


 ディーンの顔が驚愕に歪む。英斗の神の三つ矛(トライデント)を受け、既にひびが入っていたことを、室内の誰もが気付いていなかった。

 六郎は隙を見逃す馬鹿ではない。六郎の一撃は、ディーンの頭部の兜を砕き、そのままディーンを斬り裂いた。




 その一撃で、ディーンは完全に崩れ落ちる。だが、六郎の命も後わずかであった。たった一撃で、六郎の体はボロボロになっていた。


「六郎、大丈夫か!」


 英斗は六郎の元へ駆けよる。


「もう、大丈夫だ。俺は、やったか?」


 既に弱い声である。長くはないことが伝わってくる。


「ああ。立派に果たしたよ。俺がこの目で見てた」


「すまねえな。エースであるお前をここに残らせちまって……。行っていいんだぜ?」


「なに、すぐにいくさ。だから心配しなくていい。六郎、お前は誰よりも男だったぜ。本当に格好良かった。俺が保証する」


 英斗の声は僅かに震えていた。


「嬉しいなあ。英斗がそんなこと言ってくれるなんてよお……。きっとお前はこれから英雄になるぜ? そんな奴に言われるなんて、俺も捨てたもんじゃねえよ」


「死ぬなよ、六郎……」


 英斗は先ほどからポーションを駆けているが、やはりアンデッドである六郎に効果はないようであった。


「そんなこと言われたら、消えづらいじゃねえか……勝てよ、英斗」


 六郎は最後に笑うと、体から魔力が失われ、そのまま物言わぬ骨へと変わってしまった。その骸はどこか笑っているように見えた。


「六郎……」


 最後に満足して逝っただろうことは分かっていても、英斗は寂しかった。だが、ゆっくり感傷に浸る時間も与えられていなかった。

 動かなかったディーンの体が徐々に再生し、動き始めたからだ。


 ディーンは大きく凹み、血で染まった甲冑を動かし始め、動かなくなった六郎に気付く。


「結局死におったか! 所詮は骸骨騎士よ! 俺は生き、奴は死んだ! 無駄死にに過ぎんかったな。ハハハハハ!」


 ディーンは下卑た笑いを上げる。


「無粋な……。もういいよ、お前」


 英斗は小さく呟いた。


「なっ!?」


 次の瞬間にはディーンの眉間には神の三つ矛(トライデント)が叩き込まれていた。


「ガアッ!ァァア……」


 神力をしっかりと込めたその一撃に、ディーンは小さな息を漏らし倒れこむ。そのまま塵となって消えてしまった。


「さようなら、六郎。お前の勝ちだ」


 英斗は六郎の骸に声をかけると、上階へ向かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] こういう系の話は本当に良いですね。下手な人が書いたらイラッときますが、作者さんが書いた文章には感慨深いものを感じました。
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