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手が滑った

 初めに扉から見える光に気付いたのは、英斗だった。


「扉が開いた! 行くぞ!」


 英斗はこぼれんばかりの笑顔で叫ぶ。


「……罠?」


 織也は未だに半信半疑である。だが、それを見た将軍ゾンビの驚愕は演技とは思えないものだった。


「なぜ……扉が開いている! あ奴、裏切ったのか……!」


 将軍ゾンビは怒りをこらえきれない様子で、千鶴に斬りかかる。その四刀を受け止めながら、千鶴は笑う。


「どうやら、賭けはこちらの勝ちのようだな! いっきに上がれ!」


 英斗は翼を生やすと、すぐさま扉を越え城内に侵入に成功した。扉を出た先もどうやら敵だらけのようだ。


「すまん、少し手間がかかった」


「なに、信じてたよ六郎」


 六郎の端的な一言に、英斗は笑顔で返す。


「あいつか?」


「ああ……奴が妻の仇だ!」


 英斗の目線の先には、ディーンが居た。ディーンは漆黒の甲冑を全身に纏い、大剣を担いている。巨大なアンデッド馬に騎乗しており、その隙の無い身のこなしと雰囲気からすぐさま幹部であることが伝わってくる。

 その会話を聞いていた、ディーンが口元を歪める。


「なんだ……覚えていたのか。妻を殺した男に仕えているお前は最高に滑稽だったぞ? どんな演目よりもよっぽど笑えたよ」


「貴様ァ……」


「そして最後はアンデッドとして生き返っても、また俺に殺される。それがまた、滑稽だ」


 ディーンは大剣を構える。


「これは俺の戦だ、英斗」


「……分かってるさ。露払いは任せろ。皆、死王の元へ。ここが終わったら、すぐに向かう」


 英斗は扉から、出てくる仲間に告げる。


「分かった。俺達だけじゃ、止めはさせない。終わったら、来てくれ」


 織也は頷くと、他の仲間を連れて上へ向かった。


「ああ」


 六郎は両手にロケットランチャーを担ぐと、ディーンに向けて放つ。ディーンは突然現れた武器に驚き、直撃を受ける。

 爆音が城内に響き渡る。爆煙で部屋が埋まる中、英斗は周囲のアンデッドを倒していく。煙が晴れた頃、ディーンは大きな傷もなくその場に立っている。どうやら大剣で受け止めたようだ。


「人間の武器を使い、騎士の誇りも失ったか」


「誇りは骨になったときに捨てたのさ」


 六郎はディーンに向けて連射する。ディーンは馬を巧みに操り、躱しながら六郎に接近する。

 ディーンは馬上から、大剣を六郎に振るう。六郎はなんとか攻撃を横っ飛びで躱すも、その威力に舌を巻く。


(一撃でも食らったら、粉々だぜ……)


 圧倒的な機動力の差であったが、狭い室内であることが六郎の寿命を延ばした。この狭さでは馬の機動力も十分に発揮できない。

 英斗は六郎達の戦いを見ながらも、どんどん周囲のアンデッドを殺していき、部屋と扉を鉄で埋める。


 六郎は懸命に、ディーンが大剣を振るう隙に、ロケットランチャーを左腕に撃ち込んだ。ディーンの左腕の鎧が、裂け腐った肉が見える。


「貴様ぁ! たかが骸骨騎士無勢が!」


 ディーンは左手で、六郎の服を掴む。


「死ね!」


残った右腕で大剣を六郎の頭蓋目掛けて突きさす。


神の三つ矛(トライデント)!」


 英斗は六郎が掴まれた瞬間、三つ矛の槍を生み出し渾身の力で投擲した。通常の武器とは違い、魔力を宿した特別製である。

 空間の斬り裂くその神槍は、大剣に突き刺さる。その一撃に僅かにそれた大剣の突きは六郎の頭蓋の五センチ先を通り抜けた。


 ディーンが、英斗に目を向ける時には、既に小型ミサイルがディーンの目の前まで迫っており、甲冑に直撃する。

 爆発と共に、六郎が手放される。地面に落下した六郎はすぐさまディーンと距離をとった。


「すまん、六郎。手が滑った」


 英斗はあくまで手助けでなく、手が滑ったと主張する。呆れる六郎だが、責めることは無くただ告げる。


「ありがたいが。俺が負けても、手は出さなくていい」


「ふう……、分かったよ。見守っているさ」


 英斗はこれ以上邪魔はしないと、約束する。


 ディーンは甲冑が大きく歪んだものの、まだ生きている。


「貴様ああ! 卑怯者が! 全員八つ裂きにしてやる!」


「お前の相手は俺だ! 邪魔が入ってすまなかったな」


 六郎は馬を狙って、ロケットランチャーを撃ち込む。馬の前脚骨が吹き飛び、バランスを崩す。馬が倒れ、ディーンも膝をつく。

 六郎はその隙にいっきに距離を詰めると、ディーンの甲冑の内部に手榴弾を突っ込んだ。次の瞬間、ディーンの甲冑の内部で大爆発が起こる。

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