闇の眼窩で何を思う
暗闇の中、懐中電灯の灯りだけが冷たい通路を照らしている中異変は起こった。
「音が、しないか?」
織也が呟く。
「ああ。出たぞ!」
英斗が叫ぶ。英斗達がやってきた森側の通路から大量の魔物が現れる。それは数千ではきかない程で、通路全てがアンデッドで埋まっていた。
その数に、英斗の口元から乾いた笑いが漏れる。
「やはり、嵌められたんだ! あの、骸骨騎士に!」
怒りのこもった声色で、織也が叫ぶ。
「この数……こちらの計画は筒抜けだったようね」
有希も苛立ちながら、槍を生み出す。
「まあ、今更せめても仕方あるまい。我らに出来ることは奴等を蹴散らすだけよ」
千鶴はその刀を振るい、魔物の頭部を撥ね飛ばす。
「六郎……」
英斗はただ呟きながら、ランタンの付いた槍をいくつも生み出し、天井に突き刺した。簡易的な灯りである。
城側の地面からも大量のアンデッドが這い出してきた。これにより英斗達は狭い通路で挟撃に晒されることになる。
「地面からも!?」
有希が地面から自らの足を掴む地獄の亡者を消し飛ばす。前後、地面から三方向からの襲撃である。
「とんだ、間抜け野郎……だ。だが、こんな、雑魚にやられるほど、弱く……ない『重力空間・五倍』」
織也が手を翳すと、森側通路から来た魔物がその重力によって地面に押しつぶされる。肉がつぶれた鈍い音と共に、アンデッド達が破裂し地面が血に染まる。さらに後方に控えている魔物も本能的に危険を感じたのか、動きが止まる。
「片側は……しばらく時間を稼ぐ……」
有希と千鶴は、前方のアンデッドと地面からの現れる地獄の亡者の退治に回っていた。
『凍り付け!』
ナナは、地面を凍らせることで魔物の発生を止める。
(このレベルだけなら逃げることも可能だが……)
英斗は考える。
ここで逃亡するということは、この計画の失敗を意味する。既にこちらの意図はばれていることを考えると、それも仕方ないことであろう。
だが、その考えを止める魔物が現れる。複数のスカルドラゴンと、将軍ゾンビである。
『スカルドラゴン S級
遥か昔、町を滅ぼしたドラゴンの骨が蘇った姿。その圧倒的な強さは健在』
『将軍ゾンビ S級
万のアンデッドを指揮するゾンビ。四本の腕を使って繰り出される連撃は、いかなる敵も斬り裂くと言われている』
「後、少しだけ……ここで粘る。皆、力を貸してくれ!」
時刻は既に十時になろうとしていた。英斗は六郎を信じて、その剣を振るい時間を稼ぐことを選んだ。





