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俺のために死んでくれ

「英斗の神力っていまいち役に立たないと思っていたけど、やっぱりそれのせいで効いているのかしら」


 その凄さを同様に理解できていない有希ものんびりと観察していた。


「神力だと!? どういうことだ!? 奴のスキルは『万物創造』じゃないのか?」


 千鶴は娘の肩を掴むと前後に揺さぶる。


「ちょっと、母さん! 英斗はダンジョンタワーを踏破した際に、『神の使い(ゴッドメッセンジャー)』っていう謎のスキルを貰ったのよ。いまいち分からないんだけど、魔力以外に、神力っていう力も貰ったの」


「彼の技が効いているのも、それが理由か! なんという運命の悪戯か……いや、スキルを与えた者は彼に、この役目を……?」


 千鶴は考え始める。


「お前ら、すまない! 俺のために死んでくれ!」


 がしゃどくろは部下に叫ぶ。それを聞いた部下は無言で英斗に襲い掛かる。がしゃどくろは、城門の上に飛び乗り、魔力結界をすり抜け中に逃げ始める。


「逃がすか!」


 英斗は小型ミサイルを放つも、城門の上部に張られている魔法結界に阻まれる。次の瞬間には残った魔物が英斗に殺到した。


「雑魚が! どいてろ!」


 英斗は獄炎刀とスキルを使い、デスナイトやアンデッドゴーレムを粉砕していく。地面から大量の手が英斗の足を掴む。


「……邪魔だ」


 英斗は地面から鉄の棘を生み出し、地面から生えた手を一掃する。数分もかからず、魔物達を全滅させたが、がしゃどくろには逃げられてしまった。


「がしゃどくろには逃げられたか……魔力結界付近で戦ったのは失敗だったな」


城門の中から、魔物が動く音が聞こえる。すぐに再び大量に魔物が出てくるだろう。


「英斗、逃げるわよ!」


「了解ー」


 英斗は城門前から移動し、北の森へ向かった。それを見つめる謎の視線に気付く者は居なかった。










 英斗は北の森に着いた頃、額の汗を拭く。


「凄いじゃないか! まさかあんな隠し玉があったなんて! これなら、死王の命にもきっと届くぞ!」


「まさかがしゃどくろをあそこまで追い詰めるなんて! 次は仕留められるぞ!」


 千鶴と六郎は先ほどの一件で興奮しているようだ。それほど、彼等のスキル『不死』に手を焼いていたのだろう。


「やっぱり神力なんだろうなぁ。これなら死王も仕留めれそうだ……。だが、これ使い放題って訳じゃないんだよ」


 現状神力を纏った攻撃は、その攻撃にもよるが二十回ほどが限度。その限られた数で死王を仕留めなければならない。


「なに、それなら我々が道を開けばいい。君が止めさえ指せばいいんだからな!」


 千鶴が笑いながら、自らの胸を叩く。


「頼りにしてます」


「まあ、詳しいことは夜話そうか。皆、手分けして探そう」


 英斗達は分かれて、城に続く地下通路への入り口を探し始める。


「どこに隠してあるんだろう……。地面に埋まってるなら中々手間だぞ」


 森の中は、木々に潰された建造物が朽ち始めていて、苔が生え始めている。地面もアスファルトは罅割れており、地面と苔に占領されていた。


「英斗」


 声をかけられ振り向くと、有希が手を振っている。


「なにか見つかったか?」


「そうじゃないんだけど……」


 何か少し言い辛そうに口ごもる。


「何かあったのか?」


「そうじゃなくて。六郎のこと、本当に信用できるのかな?」


 有希は真面目な顔で、英斗の目を見つめている。


「罠かもしれない、と思う訳だな?」


「絶対って、訳じゃないんだけど……。何か出来すぎてる気がするのよね」


「丁度現れた魔物が、俺達の知りたい隠し通路を教えてくれる。確かに出来すぎてるかもしれない。けど、六郎の話が嘘にも思えなかったんだよなあ。どうなっても柔軟に対応するから大丈夫さ」


 英斗は何があっても対応する予定だ。たとえ六郎がこちらを騙していたとして、それを利用して進む覚悟があった。


「ならいいわ。変なこと言ってごめんね。私も入口探してくるわ」


 有希は伝えて満足したのか軽い足取りで木々の中に消えていった。


「だが、俺は信じたいんだよ……あいつのことをな」


 死してなお、魔物として愛する者のために動く六郎を信じたい、という英斗の願望である。


 その後空が朱色に染まり始めた頃、英斗達は帰路に着く。


 警戒を決して怠っていたわけではなかった。敵に住処をばれないように、周囲を警戒していた。だが、その警戒をすり抜け、容易く英斗達の近くにまで迫っていた。




「……よう」


 黒いフードを被った謎の人物が英斗の後ろに立っていた。

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