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宗梧

 背後に現れたのは、A級魔物達である。それも計十体以上である。がしゃどくろも精鋭を揃え、待っていたのである。


「A級程度で我らが止まるか! がしゃどくろは俺が()る! お前らは周囲の雑魚をけちらせ!」


「お、おう!」


 前方からもアンデッドゴーレムが十体ほど地面から現れる。アンデッドゴーレムはA級魔物であるが、ゴーレム由来の巨大さと力に加え、触れた者を溶かす腐食の力を持っている魔物である。

 精鋭達は複数で当たれば、A級魔物と引けもとらない実力があった。だが、城壁からは彼等目掛けて矢の雨が降り注ぐ。


「ぐうう!」


「足をやられた!」


 周囲の雑魚アンデッドは斬られる事もいとわずしがみつき、部隊の者の動きを止める。そこに矢の雨が降り注いだ。

 素早い城門突破で矢など遠距離攻撃を避けようとしていたが、あてが外れたのだ。


「竜牙旋風!」


 宗梧の一撃はがしゃどくろの巨大な掌に受け止められる。骨を砕いても、すぐに再生している。


「これが幹部の不死性か……! 厄介な! なら全てを吹き飛ばすまで!」


 宗梧は魔力を再びレイピアに集中させる。だが、それを待つほどがしゃどくろは甘くなかった。


「地獄潰し!」


 その巨大な両手で、宗梧を叩き潰した。骨が砕ける鈍い音が響く。


「隊長!?」


 掌に押しつぶされて、姿の見えなくなった宗梧を心配する悲鳴が上がる。だが、がしゃどくろの目線の先は、未だその掌の中にあった。


「……敵から目を離すな灼炎……風龍連撃!」


 骨を砕かれていても、宗梧の目は死んでいない。掌を押しのけ、血だらけの体でがしゃどくろの懐に入ると、灼熱を纏った竜巻による連撃を行った。

 その一撃一撃が、がしゃどくろの体を粉砕する。連撃が終わる頃には、がしゃどくろの骨は全て粉々になっていた。


「どうだ……化物が……!」


 折れた左腕を支えつつも、宗梧がにやりと笑う。


「「「や、やったぞー! 隊長が、幹部を破った!」」」


 部隊の者が皆、歓声を上げる。


 だが次の瞬間、皆驚くべきものを目にする。粉々になった骨が宙に浮き始め再生し始めたのだ。瞬く間に、元の巨大な骸骨が生み出されていく。皆、呆然と再生するがしゃどくろを見守ることしかできなかった。


「ハハハ、良い顔だ! その顔が見たかった。必死で俺を殺そうとし、それでも勝てず絶望するその顔がな!」


 がしゃどくろは大声で笑う。一方、宗梧の顔は絶望に染まっていた。




 宗梧だけでなく、他の者も絶望に染まっていた。あの一撃で仕留めてもすぐに再生するこの化物にどうやって勝てばいいのか、想像もつかなかったのだ。


「い、一時撤退だ!」


 宗梧は叫ぶ。その判断自体は素晴らしかった。だが、既に包囲網は完成されていたのだ。


「どこに逃げるって?」


 背後には数千を超えるアンデッドが既に群がっていた。


「この程度で……俺を止められると――」


 その言葉の途中で、地中の異常に気付く。地面から手が生え、部隊の皆の足を掴んだのだ。


「ここが手薄だと思ったんだろ? ここは一番の地獄さ。地中には、地獄の亡者(ヘルハンド)が大量に居たのさ」


 がしゃどくろが告げる。地獄の亡者(ヘルハンド)は人間の捕獲に特化しているアンデッド系の魔物である。掴まれたが最後、簡単には逃げられない。いくら手を斬り裂いても、無限に出てくるその手に地獄に引きずり込まれると言われていた。

 大量の地面から生える腐った手が、部隊の皆の動きを止める。


「離せェエエエエ!」


 宗梧は地面の手にレイピアを突き刺し消し飛ばす。宗梧の実力があれば、ただ地獄の亡者だけなら逃げられただろう。時間があれば、の話であるが。


「もう終わりだ! 殺せえええ!」


 がしゃどくろの言葉と同時に、デスナイトや、アンデッドゴーレム等が動けない部隊の者達に群がる。


「じゃあな」


 がしゃどくろはそう言うと、拳を動けない宗梧に思い切り打ち込んだ。宗梧は小さく悲鳴をあげると、首があらぬ方向に曲がったまま、もう動くことは無かった。


「た、助けてくれええ!」


「や、やめ! お願いだか――」


「ひぃ!」


 部隊の者は皆悲鳴を上げながら、一人一人殺されていった。数分後、その場に生きている者は誰一人として居なくなったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなにハイレベルなカマセだと!?(驚愕) 側近の内の一体と相打ちになる事すら出来ないなんて……
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