宗梧
金髪の男は、英斗達に気付く。
「誰だい、君達は?」
「宗梧さん。こいつら、一週間後に魔物達が福岡へ侵攻するって、言ってるんですよ。どうやら情報源はアンデッドの魔物みたいで、信用性が……」
先ほどまで英斗と話していた男が、金髪の男宗梧に伝える。
「そんなことが……。君も中々強いようだが……そんな魔物の嘘に騙されるなんてまだまだだね。だが、大丈夫さ。一週間後にはもう死王は死んでいる。僕達があいつを仕留めているからね。奴が居なくなった今は、僕が九州のNo.1だからな」
とどこか馬鹿にしたように英斗に言う。
「やはり信じてはもらえませんか……。南門から攻めるのは危険です。一見手薄そうですが、あれは誘いのようです」
だが、仕方ないことでもあるだろう。信頼関係の無い状況で、信じろと言っても難しい。情報源が魔物というのもやはり良くなかった。
「それも魔物に聞いたのかい? それにアンデッド如きの罠など恐るるに足らん。奴らは不死性が厄介であって、知能は低い。そんなちんけな罠など、九州男児には通用しない。魔物が攻められたくないから嘘をついているんじゃないか? 君はそんなことも分からないのか? 後ろにも魔物を飼ってるようだからね。君はその汚い犬とアンデッドの味方かな?」
「なんだと……!」
英斗はナナを馬鹿にされたことにより、怒りが漏れる。
「なんだ? 図星か? とっとと失せるがいい。我がレイピアで穴だらけにならないうちにな」
と嘲るように告げる。それを聞いて、周りの男達も皆英斗達を嘲笑する。
「馬鹿なだけならともかく、人類を裏切るようなことを言い始めるとはな。裏切者はとっとも失せな! そこの女どもは別に残ってもいいぜ? 一人は年増なようだが、体は良さそうだ」
と後ろに居た髭を生やした男が下卑たにやけ顔で、有希と千鶴を見る。
それを見て有希は心底不快そうな顔を見せる。
「お断りするわ。自分の実力も分からない馬鹿共と居たら、いくら命があっても足りないからね」
「ほう。言うじゃないか……どちらが馬鹿かはすぐ分かるだろう」
宗梧は有希の返しを鼻で笑う。
「もういい。行こうか。忠告はしたからな」
英斗は握った刀を振ることだけは避け、彼等に襲い掛かる前にその場を去った。
「あの馬鹿共が! 信じないのは仕方ないにしても、ナナまで馬鹿にしやがって!」
英斗は六郎と話していた場所に戻った後、怒りを噛み殺したような声で唸る。
『英斗が怒ってくれただけで、私は嬉しいよ?』
ナナはそう言いながら、英斗の顔をペロペロと舐める。そんないじらしいことを言うナナを英斗は抱きしめる。
「なんて健気な……! やっぱり奴らは根絶やしにすべきだったか?」
「あんな馬鹿共、ぼこぼこにしても良かったわ。ナナちゃんを馬鹿にするわ、私達は下卑た目で見てくるし……最悪」
「確かに、品の無い奴らだった。あんなのが九州の精鋭なら、やはりここが滅びるのも近いな」
千鶴が溜息を吐く。
「やっぱり俺の情報だからこうなったのか。他の情報源なら……」
「別にいいさ。そこで嘘をつくと後で面倒になったかもしれないからな」
六郎のかなしそうな声に、英斗が答える。英斗は、別に嘘をつくこともできたが、したくなかったのだ。それをすると、アンデッド由来の情報は信用できないと決めつけているようで、六郎への裏切りのように感じた。
「ありがとな、英斗」
「気にすんな。だが、南門も駄目なら、どうしたらいいかねえ」
「それだが、俺に考えがある。いっきに城内に向かえる秘密のルートがある」
六郎は笑いながら、そう言った。





