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事情

 六郎は言われた言葉をすぐ理解できなかったのか、一瞬沈黙が流れる。


「あんた……俺の姿を見て言ってるのかい?」


 六郎は自虐的に笑いながら言う。


「姿が今関係ないだろう? 大事なのは何を思い、行動するかだ」


「……そうかい。あんたを信じて、話をしよう。俺の名は、釘西(くぎにし)六郎(ろくろう)。元人間で今はしがない骸骨騎士さ」


「俺は月城英斗。東京から死王を倒すために来た。後ろに居るのは俺の仲間だ」


 英斗は他のメンバーも紹介する。


「わざわざ東京から来るとは変わってんなぁ。今日、上から福岡市への侵攻計画を告げられたんだ。その期日は一週間後。なんと、全十万のうち六万を超える大部隊での侵攻になるらしい。それを聞いて、何とか伝えないと考えたが……あのざまだ」


 六郎は、表情の読めない骸骨フェイスで両手を上げる。


「なるほど……。それは絶対にあらかじめ伝えた方がいいな。あちらも用意は必要だろうし。必ず伝えておく。だが、これはチャンスでもある。そう思わないか?」


「確かに。二手に分かれるのであれば、相手をするのは半分で済むわ。福岡市も何万人も人が居たし、ここで死王のみを討ち取れば……」


 英斗の言葉に、有希も頷く。


「六郎、どちらに死王が居るか分かるか?」


「俺はアンデッドパラディン率いる歩兵部隊の一員だが、俺の部隊は城で死王の守備と聞いている。おそらく福岡市を攻めるのはエルダーリッジの魔法部隊と、がしゃどくろの屍魔獣部隊だろう」


「なら、二部隊が出ていった時に城になんとか攻め込もう。どこか穴に心当たりはないか? 南門がまだ狙いやすそうだったが・・・・・」


「一見南門が手薄に見えると思うんだが、あそこは罠だらけで誘いになっている。見えないところに、魔物が大量に潜んでいて、一番危険だ」


「やはりあれは罠だったのか……。少し薄いと思っただけだが、誘いだったのか。やはり死王はただ適当に配置しているわけじゃ無く、色々計略が練られていると考えて動いた方がいいな。だが、その前に聞きたいことがある。なぜ六郎、お前は仲間を裏切り、人間側につこうと思ったんだ」


 英斗は核心に切り込んだ。この作戦の要は六郎の情報である。これが罠であればこの計画は根本から失敗となる。そのためどうしても六郎の腹の内を知る必要があった。


「……当然気になるよな。俺は数日前までずっと普通の骸骨騎士として生活していた。普通の末端兵だ。当然自軍の部隊のトップであるアンデッドパラディンと会う機会なんてなかった。今回の侵攻計画の発表で初めて俺はアンデッドパラディンの姿を見た。その時俺は思い出したんだ……。俺も、妻も、あいつに殺されたことをな!」


 六郎は初めて大きな感情をあらわにし叫ぶ。


「俺は馬鹿だから……自分を殺した相手の下に付いて、のうのうと暮らしていたわけだ。だから、これはただ人類のためというより、俺の復讐なんだ。きっと俺がパラディンに歯向かっても、勝負にならないだろう。だが、命を捨ててでも……引くつもりはない」


 六郎は震えた声ではっきりとそう言った。その鬼気迫る言葉からは嘘は感じられない。


「そんな理由が……分かった。六郎はアンデッドパラディンを、俺達は死王を狙う。そのために協力して動こう」




 英斗は六郎を信じ、手を差し出した。


「分かった。よろしく頼む、英斗」


 六郎はその肉の無い骨の手で、英斗の手を握る。ここに、人間とアンデッドの共同戦線が生まれた。






「これからどうするんだ?」


 六郎の問いに、英斗が答える。


「まずは、さっきの集落の人達にもう一度言ってみるよ。人間の俺達が言えば、何か変わるかもしれないしな」


「魔物の俺のことを信じる英斗が特殊だからな。俺の代わりに彼等の説得を頼む」


「私達も行くわ」


「そうしてくれると助かる。じゃあ、六郎は悪いが少し留守番だ」


「ああ。頼んだ」


 敬礼する六郎を尻目に、英斗達は先ほどの集落へ向かう。

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