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六郎

 建物の屋上を跳びながら、死王の居城である天守閣の周囲を回る。

 日の出ている時間に天守閣を見ると、その荘厳さに目を奪われる。魔力により生まれだされたであろう、漆黒の瓦と、新雪のような白い漆喰のコントラストは敵の居城ながら美しいと感じられた。


 だが、禍々しい魔力は隠しようがなく、周囲には黒い靄が見られる。武器と纏った骸骨剣士が整列し軍事練習を行っており、全ての門には門番と思われる魔物が立っていた。

 櫓には弓を持つ骸骨が、警戒し周りを見渡している。


「彼等に肉がついていたら、完全に戦国時代だな、こりゃ」


「本当にね。空中もしっかり守っているし、上からの強襲は厳しそうね」


 英斗の軽口に、冷静に有希が返事をする。天守閣の上空は、スカルドラゴンや、スカルワイバーンが守りを固めていた。中々穴がない。


「さらに面倒なのは、見えるか? 魔法結界だ……おそらく死王お手製だろう」


 千鶴の言う通り、城壁の上には高度な魔法結界が張られていた。丁寧に城壁内に魔方陣を描き作られており簡単に破壊はできないだろう。


「いやー、厄介だね。やっぱり城門から堂々と来いって、ことなんだろうね」


 なぜか城門には魔法結界は張られていない。代わりに兵が沢山いる訳であるが。


「それだと何万体殺さないといけないのか見当もつかんぞ。策なしで突っ込むのは自殺行為だ」


「何か……ないかねえ」


 英斗は立ち上がると、再び周囲を回り始める。






 太陽が西に傾き始め、夕方を意識し始める時間になる。


「分かったことは、あの城が鉄壁に近いってことだ」


 英斗は、ビルの屋上の冷たいコンクリートの上に大の字で寝転ぶ。


「あそこまで、規則正しく軍のように動く魔物は初めて見たわ」


「とりあえず、帰るか」


 英斗が腰をあげ、寝床であるビルに戻ろうとすると、人の声が聞こえる。

 すぐさま、しゃがみ込み警戒心を高めつつ声の先を探る。その先には、骸骨騎士が人間に怒鳴られているという謎の状況があった。


「どういう状況だ、あれ?」


 一同首をかしげる。英斗が鳥型自動人形を生み出し、近くまで飛ばす。鳥から話を聞く。




「だから! 俺は元人間なんだ! 生前は釘西(くぎにし)六郎(ろくろう)だった。武器も持ってない。俺の話を聞いてくれ!」


 六郎と名乗る謎の骸骨騎士は、何も持っていない両手を上げて、声をあげる。


「貴様のような化物の話を聞くか! どうせ俺達を罠に嵌めるつもりだろう!」


 それを聞いた若者が、六郎に怒鳴りつける。若者の周りには多くの人だかりがあった。おそらく小さな集落なのだろう、見えるだけで百人ほど確認できる。


「違う、俺は自我を取り戻したんだ! 後一週間程度で死王の軍が、福岡市を攻める! だから逃げるか、戦うか、用意をしてくれ! それを伝えに来たんだ!」


「化物無勢が! 人を騙りおって! 成敗してくれるわ!」


 若者は剣を握ると、六郎に襲い掛かる。六郎は済んでのところでそれを躱すと、泣きそうな声で叫ぶ。


「本当なんだよ~! し、信じてくれよお!」


「殺せ!」


 その言葉と共に放たれる矢を見て、六郎は逃走した。なんとか逃げ切ったようで、集落の者達は舌打ちをする。


「逃がしたか……」



◇◇◇




「あれは罠だと思うか? 英斗」


「正直何とも言えないな……だけど、『奇貨置くべし』ということわざもある。もし人間側の魔物が居るなら、とても貴重だ。ナナみたいな例もある。コンタクトを取ってみよう」


『皆が皆悪い訳じゃないしね!』


 英斗達はビルから飛び降りると、六郎の元へ向かった。


「六郎とやら、話を聞かせてくれないか?」


 とぼとぼと悲しそうに歩く六郎の背に声をかける。


「誰だい、あんたら?」


 振り向くと、流暢に言葉を話す六郎。一体どこから声が出ているのか、疑問である。見た目は完全に服を着た骸骨である。その頭蓋骨からはなんの表情も伺えない。


「先ほどの話を聞いていた者だ。死王を仕留めるために、力を貸してくれないか?」


 英斗は笑顔で、そう言った。

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