ジャングル
11階は今までと景色が大きく変わっていた。まず広大なジャングルが広がっていたのである。鳥や魔物の鳴き声がそこら中から響き渡っている。そして今までは洞穴ですぐ上には天井があったのだが、ここには疑似的な空が、太陽があったのだ。明らかにおかしい。
だが、スキルのあるこの世界で今更そこに突っ込んでも意味はないだろう。
ナナは自然が嬉しいのか笑顔で走り回っている。 ナナが満足したのを確認してからジャングルを進む。
「シャ―!」
しばらくナナと探索していると突然、巨大な蛇『シャドウスネーク』が木の上から襲い掛かってきた。英斗はとっさに盾に魔力を込め盾でその一撃を防ぐ。そして盾から鉄の棘を生やし蛇を口内から貫いた。
「危ねえ……」
口からは紫色の液体が漏れ出しており、それに触れた草は枯れていた。どうやら毒のようだ。
英斗はこのシャドウスネークが食べられるか考えるが、知識不足により諦める。
英斗は蛇を放置しナナと共に進む。しばらく歩いていると、木の上から赤い顔をしたゴリラのような魔物『レッドエイプ』が英斗達を覗いている。
英斗が長剣を握ると、レッドエイプは鳴き声を上げながらその場から消える。だが、樹上ではゴリラの鳴き声がどんどん増えている。
「仲間を呼びやがったのか……!」
樹上にはどんどんレッドエイプが増えていっている。既に10匹を超えたレッドエイプがこちらを監視している。
英斗達は囲まれる前に前方に駆ける。
「ウホッ、ウホッ」
そこら中のレッドエイプが集まっており英斗達を追っている。
1匹がドッジボール程の石を英斗に投擲する。英斗は鉄の棘を生み出し、石を貫く。
「危ねえなあ。くそ、どんどん増えていきやがる」
英斗達を囲むレッドエイプは既に30匹を超えた。そのうちの1匹が英斗に襲いかかる。英斗は炎の槍を生み出し、レッドエイプに放つ。
直撃し、頭部が消し飛びそのまま静かに地面に落ちる。
「「「ウホッ!?」」」
一瞬でやられた仲間を見て、ざわめくレッドエイプ。それを見た他のレッドエイプより一回り大きいレッドエイプが叫ぶ。
「ウホッーーー!」
おそらく群れのリーダーだろう。その声を聞き冷静さを取り戻したレッドエイプ達はまとめて襲いかかってくる。
「背後は任せたぞナナ」
そう言うと英斗は鉄球を掌に生み出し、鉄球から鉄の棘を生成する。その鉄の棘は無数に枝分かれし襲いかかるレッドエイプを串刺しにする。
ナナは口から冷気を放ち、後方から襲いかかるレッドエイプ達を氷漬けにする。
殆どが全滅した事で、群れのリーダーが踵を返し逃げ出した。
「おいおい、お前が部下を仕向けたんだ、お前も責任をとらないとな」
英斗はそう言うと、先程の倍はある3mを超える炎の槍を生み出すと全力で投擲する。その槍は群れのリーダーの腹部を消しとばし、リーダーは静かに墜落した。
すると、英斗の体が熱くなる。久しぶりのレベルアップである。
「久しぶりだな、レベルアップ。これで33か」
「ワウッ!」
ナナがおめでとう、と吠える。
「ありがとう、ナナ。ここは広い分集団で来られると面倒だな。さっさと抜けるか」
英斗はそう言うと、ナナに乗り再びジャングルを駆ける。
2日かけて15階の扉まで到達した。数多くの魔物を仕留め、宝箱も入手した。
「ようやくエリアボスか……。敵も少しずつ強くなってきてるからなあ。楽しみだ」
そう言って英斗は扉を開ける。