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福岡市

 五分後、大量の銛を受け動かなくなったクラーケンを斬る英斗の姿が船上にあった。


「英斗、ゆっくりしてる暇はないわ! 最初のクラーケンの締め付けで船下にヒビが入った。じきに沈むわよ!」


『ピンチー』


「マジかよ!」


 有希は沈みゆく船を全力で動かす。元々そこまで距離もなかったため、陸はもう目と鼻の先である。

 残り三十メートルといったところで、船の半分以上が水に沈む。


「英斗はクラーケンの死体担いで! 私はナナちゃんを担ぐわ!」


「了解!」


 英斗と有希は翼を生やすと、ナナとクラーケンを担ぎ船から脱出する。


「ああ……俺の渦潮丸が……」


 英斗は沈みゆく自慢の愛船を見ながら、海岸に降り立った。手にはクラーケンを持っているため、少し生臭かった。


「タイ〇ニック号になってしまったわね」


 一方有希はどうでも良さそうな顔で、渦潮丸の最後を見守っていた。


 


 海岸沿いは人っ子一人居らず、地面の砂からは人や魔物の骨が顔を出している。周囲には建物は何もなくどうやら人里からは離れている場所のようだ。英斗はクラーケンを解体した後、マジックバッグに収納する。


「なんとか九州には着いたな」


『どこ目指すー?』


「うーん……とりあえず福岡市と言うところを目指そう。そこで情報集めだ」


 正直そこまで九州の地形を理解していないのだ。福岡は西というレベルである。英斗はインターネットに生かされていたことを痛感する。

 英斗は日本地図とコンパスを頼りに修羅の国福岡を目指すことを決めた。


 海岸を出てすぐ、こちらに走って来る男達が居た。手には武器を持ち、何かから逃げているのか余裕がない。


「お、お前ら! 何で来た!? 船か?」


「船で来たが、もう沈んだよ。クラーケンに襲われたんだ」


「本当か? 嘘つくとお互いのためにならんぞ」


 一人の男が武器をちらつかせる。


「せめて何か食べ物でも……」


「やめとけ! こんなところで無駄に魔力を使うな。きっとあちらに渡る際に使う事になる」


 先頭の男を、後ろの者が諫める。どうやら、本州に逃げたいようだ。


「わざわざここに来るなんて変わり者だな、あんたら。あっちはおすすめしないぜ」


「ご忠告ありがとう」


 男達は英斗達に襲い掛かることもなく、橋へ向かっていった。


『橋落ちてるのにねえ』


「何かから逃げていたのかもな」


 去っていく男達を尻目に英斗も先を急ぐ。






 英斗は雪に視界をたびたび奪われながら、国道を頼りに西へ進んだ。当たり前だが九州の現状も東京と大差なく、どこも魔物が我が物顔で闊歩しており生存競争に負けたことが感じられた。

 人より魔物の方がよく会うが、ナナに乗っているせいか襲われることもなく寒い以外は快適な旅と言えるだろう。


 英斗達は、英斗の生み出した温かいコートを羽織り、道を進んだ。






 そして九州に辿り着いてから一日半ほどで、福岡市付近にまでたどり着いた。


「それにしても聞いていた通り、本当にアンデッド系の魔物ばかりね……」


 有希は顔を顰めながら、路上をうめきながらさ迷っているアンデッドの頭を槍で粉砕する。

 有希の言う通り、九州地方の魔物は非常にアンデッド系の魔物が多かった。町のいたるところにゾンビがさ迷っており、さながらB級ゾンビ映画の世界のようになっている。


 人と間違えて声をかけたらゾンビだった、ということが既に何度もおこっている。


「やっぱりこれは、玉閃が言っていた化物が原因なんだろうなぁ」


 玉閃から聞いた魔法具を持つ魔物はアンデッドのようで、周囲の人も全てアンデッドに変えてしまう力を持つらしい。

 目的地である佐賀市に近づけば近づくほどアンデッド系魔物は増えるのだろう。


「た、助けてえええええ!」


 突然甲高い女性の悲鳴が辺りにこだました。英斗達は顔を合わせると、声の方向に走る。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 広い範囲がアンデッドだったなら今までよく餓死しなかったな 野菜と魚だけで今まで暮らしてたのか 内陸の人間は総ベジタリアンやな
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