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最後に

 その夜、英斗は廃アパートのリビングで一人酒を呷っていた。普段は飲まない英斗であったが、色々なストレスが溜まっていたのだろう。


「珍しいわね、貴方あまり酒が好きでもないでしょう」


 有希は英斗が酒を飲むところを見て心配そうに声をかける。


「たまにはな……。有希も飲むか?」


「私はまだ十九だから遠慮しておくわ」


「真面目だなあ。今は法なんて何一つ機能していないのに……誕生日はいつだっけ?」


「四月八日よ。後、三か月ほどかしら」


 皆もう正確な日付など覚えていないだろうが、暦は既に一月になっていた。


「そうか。なら誕生日が来たら一緒に飲もう。一杯でもいいさ」


「ふふ。まあいいわよ。それまで待ってなさい」


 酒を誘う英斗を見て、笑う。


「ああ。楽しみだ」


 英斗もそう言って笑う。少し肌寒い夜であったので、英斗は羽毛布団を生み出し体を温かくしてよく眠った。






 英斗はその後カラス型自動人形を使い、有希は単独で、様々な場所を調査していた。

 だが、有益な情報を得ることはできなかった。


『臭いを追ってるけど、恭一郎の臭いは感知できないよー』


「やっぱり近くにはもう居ないのかもしれない。そういえば、子供たちの葬式は終わったのか?」


 最近は人探しばかりで、大事なことを蔑ろにしていた気がした英斗が呟く。


「そうね……。黒崎さんに場所を聞きに行きましょう」


 児童園に向かうと憔悴しきっていて、肌も傷み切った黒崎の姿があった。


「ああ。彼等は多分、教会にまだ居ると思う。そろそろ火葬されるからそれまでに会ってあげて。きっと彼等も喜ぶわ」


 そう乾いた笑みを浮かべながら教えてくれた。丁重に礼を述べた後、教えられた教会に向かった。


「なんでまだ死体を置いてあるのかしら? 腐ってしまわない?」


「さあ。こんな世界じゃ火葬も大変だからじゃない? 炎系のスキル持ちが居ないと、火葬も大変だろう」


「そんなものなのかしら?」


 そう言いながら、教会の扉を開ける。そこには人一人居らず、大量の手作りと思われる木製の棺桶が置かれていた。


「多いな」


 英斗は思わずそう呟いた。それだけ多くの人が死んだのだろう。

 英斗が悠達を探そうとすると、外から華頂達の声がする。

 その声を聞き、とっさに物陰に隠れる英斗達。普段なら隠れもしないだろうが、先日の会話を聞いてしまったためだろう。

 中に入ってきた華頂は、無言で教会内を歩いて棺桶の方へ向かう。


「子供たちのために来たのかしら?」


 有希が、小さく呟く。


「さあな」


 華頂は一つ一つ棺桶を開け、中の人を確認して回っている。誰かを探しているのだろうか。いくつも中を確認していたが、ある棺桶を開けると小さく微笑む。

 そして次の瞬間、華頂は驚きの行動をとる。

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