突入
それ以降は、二つの勢力が街中のいたるところで殺し合いが始まった。特に子供達を殺されたほおずき会の戦い方は鬼気迫るものがあった。
「よくも、子供達を!」
「俺達はそんなの知らねえよ! 恭一郎さんは、あんな部下は知らないと言っていたぞ! うちはそんな非道なことしねえ!」
英斗達はアパートから出てすぐ殺し合いをしている連中を見つける。だが、英斗を見つけたほおずき会の男が大声を上げる。
「手伝ってくれ! あんたら児童園にいた人達だろ!」
「ちっ! 逃げるぞ!」
英斗達を増援と勘違いした商会側の者はすぐさま踵を返し逃げ出した。
「逃げられちまったか。あんた達はこちら側だよな?」
ほおずき会の男達が英斗達を見据えて言う。言葉を間違えるとその場で戦闘になりそうな雰囲気である。
「心配しなくても、必ず子供たちの仇は取る。必ずだ」
殺気を込めて言う英斗の迫力に、男達は小さく息をのむ。
「そ、そうか。疑って済まねえな」
「別にいい。誰か恭一郎の居場所を探り当てた者はいないのか?」
「俺達も探っているが分からねえ。こっちも華頂さんがお隠れになった。玉閃さんの言葉じゃ、安全のために姿を隠しているらしい」
「大将を討たれたら終わりだからな。俺達は俺達で、恭一郎の場所を追う」
英斗は彼等と別れ、独自で恭一郎の位置を探る。名古屋は日々荒れていき地面は人の血を吸って日々赤く染まっていった。
英斗達は恭一郎を追って、既に二週間が経っていた。未だに尻尾すら掴めていなかった。焦りだけが生まれていく。
だが、そんな英斗に吉報が届く。
「遂に居場所が分かったのか!」
英斗が大声を上げる。
「ああ。本当は部外者のお前達を連れて行くのはどうかとは思うが……子供たちのために色々動いてくれていたのは知ってるからな。来るか?」
この吉報を持ってきたのは、ほおずき会幹部玉閃である。いつものちゃらい雰囲気は鳴りを潜め、真剣な顔で尋ねる。
「勿論だ」
「分かった。今回の突入作戦は俺が指揮を執る。来るなら、俺の指揮に従ってもらうが、大丈夫か?」
「もちろんよ。よろしく頼むわ」
「場所は中心街からかなり外れたビルのようだ。大勢で行くと感づかれる恐れがあるため、二十人程の少数精鋭で今から向かう」
玉閃に従いともに向かうこと一時間ほど、郊外のビルに辿り着く。既にほおずき会の精鋭が集まっていた。二十階程の高層ビルである。確かに人が居ないエリアであるのに、人が居た痕跡が付近に残っている。
「それでは今から突入を行う。調べた所、一階から高峰商会の戦闘員が守っている。最上階にいる可能性が高い。皆一階から順次敵を潰し、恭一郎の確保に当たってくれ」
「玉閃さんはどうされるんですか?」
「俺は、外からいきなり本丸を叩く! そのため、中はお前達に潰してほしい」
「分かりました。ご武運を」
外から? と英斗は首をひねるが、その謎はすぐに明らかになる。
「悪いが、開戦の狼煙は俺にあげさせてもらう」
玉閃はそう言うと、体を変形させる。その姿は、古代の恐竜プテラノドンであった。全長四メートルを超えるその巨大で、壮大な姿はそれだけで圧倒的威圧感が感じられる。
『炎弾』
玉閃はその鋭い口から、巨大な炎弾を一階の出入り口に放つ。
「ぎゃああああ! なんだっ! ほおずき会の奴らか!?」
粉々に粉砕された出入口の先から、悲鳴があがる。
「後は任せたぞ、お前ら」
玉閃は翼竜の姿のまま、上に飛んでいった。
「我々もそのまま突入だああああ!」
そして、英斗達も一階から突入する。戦いの火蓋は切られた。





