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何が欲しい?

 それから英斗は日々恭一郎の元へ頼みに向かいつつも、手に入った新スキル『神の使い《ゴッドメッセンジャー》』の力の一つである神力を使いこなせるよう鍛錬を積んでいた。

 剣や体、そしてスキルで生み出した物にも纏わせることは可能のようだ。


 試したところ、神力を纏わせた武器は魔物に通常より効く。が、現状そこまで戦い方が変わるとは思えない程度といえる。


「いまいち、スキルの利便性が分からないがいつか分かるだろう」


 英斗は今後も検証を行うことにした

 魔法具の方は恭一郎に会ってさえもらえなくなっており、英斗の悩みの種である。


 いっそのこと、本当にあのプロジェクトについて知ってそうな他の人を探そうかとも考えていた。

 英斗が園内で腕を組んでいると、どうやら子供達が騒がしい。


「なんか新しいおもちゃとか欲しいー!」


 と年少組の子供達がだだをこね始めていた。やはり現状では新しいおもちゃなど中々手に入らないため、飽きているのだ。


「そうはいっても、中々新しいのなんて手に入らないのよ」


 黒崎が困った顔で子供達をなだめている。


「よし、兄ちゃんが皆にプレゼントしてやろう! ただし、電気を使うものはもう動かせないから駄目だぞ」


 英斗が子供達に言う。


「やったー! 私、くまのぬいぐるみがいい!」


「新しいバットと野球ボールくれ! グローブも!」


「俺サッカーボール!」


 と次々リクエストが入る。それを見て困ったような顔をする黒崎。


「あの……あまり無理されなくても大丈夫ですよ。そんなポンポン手に入る物でもないですから」


 黒崎は英斗のスキルを知らない。そのため、親切心から言ってくれているのだ。


「大丈夫ですよ。英斗はサンタ並になんでも持ってるんで」


「そうそう、だから安心してください。ほら、まずはくまのぬいぐるみだ!」


 英斗は、マジックバッグに手を入れ、そこで巨大なくまのぬいぐるみを生み出し、バッグから取り出す。


「わー! おっきいー! お兄ちゃんありがとう!」


 女の子は巨大なぬいぐるみを抱きしめ、大喜びする。


「すげー! 次は俺のバットと、ボール!」


「分かったから、待ってな。よし、ほらボールとバット、グローブだ!」


 英斗は新品の野球道具一式を生み出す。それを見て興奮した子供たちはどんどん欲しい物をリクエストしていく。


「わあー! 本物だ! 兄ちゃんすげえええええ!」


 子供達も大興奮である。


「す、すごいですね……。こんなに何でも持ってるなんて……」


 黒崎もぽかんと口を開け唖然としている。


「頑張っている子供達にプレゼントです。黒崎さんも欲しい物があれば出しますよ。何でもでは無いですが」


「ええと、それじゃあ化粧水を」


「分かりました。どうぞ」


「本当に何でも出るんだ」


 それからも色々、英斗は子供達におもちゃ等をプレゼントした。だが、一人だけ英斗にプレゼントをねだらず、おとなしくしている十歳くらいの女の子が居た。長く、綺麗な黒髪をしている少女である。


「君は、何か欲しい物ない?」


 それを聞いた女の子は俯いたまま、小さく呟く。


「……お母さん」


 その言葉を聞き、場が凍る。流石に英斗でもお母さんを生み出すことなどできない。英斗は、混乱しつつも、なんとかしないと考えた結果英斗は女装用のかつらを被る。


「お、お母さんだよ(裏声)」


 それを聞いた有希が、音速で英斗の頭を思い切り叩く。


「なに馬鹿言ってんのよ!」


「す、すまん……」


 素直に頭を下げる。


「私が話を聞くから、もうあんたは他の子と遊んでて!」


「はい……」


 有希はしゃがみこみ、目線を同じにして女の子に話しかける。


「おはよう。高峰有希っていうの。お名前教えて欲しいな」


「……ミカ」


「ミカちゃん、お兄さんは残念だけどお母さんまではプレゼントできないの。ごめんなさいね」


「ううん、いいよ。無理だと思ったけど、言っただけだし」


 ミカは悲しそうに言うも、やはり無理なことは理解しているようだ。


「私と遊びましょ?」


「うん」


 有希は、未だに母を忘れられない少女が気になり、その日からよく話をするようになった。初めはあまり目を見て話してくれなかったものの、有希が根気強く話しかけたおかげか、少しずつ心を開いてくれるようになった。


 何もしないと、父のことや、父の条件など色々考えてしまうので、丁度よかったともいえた。

 ミカは仲良くなると、少しずつ自分のことをぽつぽつと話してくれるようになった。ミカはどうやら自分の意志を伝えるのが苦手なようで、他の子達ともあまり仲良くできていないみたいだった。


 有希は、そんなミカと、父が怖くて自らの意志を伝えることができない自分を重ねていた。なんとかこの子が前を向いて生きてくれたら、と思い始めていた。


「実はね、お母さんはリザードマンって魔物に殺されちゃったの。昔はこんな施設も無くて、お母さん自らが魔物を倒してご飯を取ってきてくれてたんだけど、そんな強くなかったから……」


 初めて話しかけてから二週間が経ったころ、ミカは母が居なくなった理由を有希に話してくれた。こんな世界ではよくある話ではあるが、当事者からすればそれはなによりの大ごとだ。


「それは……辛かったわね」


「ううん、もういいの。それよりたまには自然とも触れ合いたいな!」


 ミカは努めて明るく言う。


「そうね。少しくらいなら」


 有希は、ミカがそれで元気になるのなら、と黒崎に許可を取りミカを連れて外に出る。


「どこ行きたいの?」


「森が良いな」


 有希の問いかけに、ミカが答える。


「森か。あまりここらへんの地形に詳しくないんだけど、場所分かる?」


「うん。あっちに森があるからそっちいこ!」


 ミカは有希の手を掴み、森へ案内する。

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