ナナちゃん無双
洞窟は暗いものの見えない程ではない。光るコケが無数に生えているからだ。歩いていると前方からゴブリンが歩いてくる。
英斗は気にせずそのまま歩き続けると、ゴブリンが襲い掛かってくる。英斗は手から鉄の棘を生み出し、そのまま貫く。
ゴブリンは一瞬で魔石となった。
「この階層程度だと話にならないな。ナナ、一気に駆け抜けるぞ!」
英斗はナナに乗り洞窟内を駆け巡る。
20分ほどでさらに深い階層への階段を見つけると、そのまま階段を下りる。
階段を降りるとすぐ人の声がする。
「ここでばれたら意味がないな、隠れるぞ」
英斗は中身が空洞な大岩を生み出し、ナナと一緒に被る。まるで演劇の小道具のようである。
英斗は自分の目の部分に穴を開け、彼らが過ぎるのを待つ。するとすぐ、男女5人組のパーティが階段へやってくる。
「ようやく1階への階段だよー。7階から歩いてくるのほんと大変だったよ。早く10階のセーブポイントまで行きたいねえ」
まだ10代後半であろう髪をお団子に括った女の子が言う。
「毎回1から潜ってらんないよなあ。マスターも19階までしか行ってねえらしいし、それより先はなにがあるんだろうな」
一緒にいる20歳前後の男が呟く。
「そりゃあお宝だよ! 私宝石欲しい―!」
「宝石なんて絶対マスターに取られるぜ」
「こんな世界でも税金取られるなんてやってらんないよなあ」
「けど逆らったら殺されちゃうよ」
「何が聖騎士だよ、なんであんな奴にそんなスキルが……」
男がぼやく。5人組は愚痴を言いながら階段を上がって去っていった。
英斗は彼らが去っていった後、被り物を消し再び更なる地下まで向かい始める。
どうやら1~5階は初心者用エリアなのか、ゴブリンやコボルト、骸骨剣士など弱い魔物が多かった。
そしてダンジョンは一定期間で魔物が再び出現するのだ。地上も魔物だらけであるが地上では強い魔物や弱い魔物が混在している。このように弱い魔物だけ出る上層はレベル上げに持ってこいである。
だが、もちろん英斗達の相手になるはずもなく、英斗達は瞬く間に5階奥までたどり着いた。
おそらく6階への階段があるのだろう場所までたどり着いたのだが、そこには大きな鉄製の門が固く扉を閉ざしていた。
「中ボスってところかな?」
英斗は先ほどのパーティの強さからここは相手にならないと感じていた。
英斗はあまり悩むことも無く、門を開ける。するとそこには鎧を纏い、剣を携えるゴブリンファイターと魔法を使うゴブリンメイジが居た。ともにゴブリンの上位種である。そして僕ゴブリン達であった。一度閉めた扉が開くか確認すると開いたのでどうやら勝てない場合逃げることは可能らしい。
また反対側にも鉄製の扉がある。そこから6階へ行けるのだろう。
「ワウ!」
ナナが私にやらせて!と英斗に訴えかける。
「そうか、行ってこい!」
その言葉と共に、ナナが疾風のごとき速さで群れに突っ込む。ゴブリンメイジからファイアボールが放たれるが、ナナは躱しそのままその鋭い爪でゴブリンメイジを切り裂く。
その速さに驚いたゴブリンファイターが剣を振るうも、ナナの牙に受け止められる。ナナは剣を咥えたまま顔を大きく動かし、ゴブリンファイターを空中に投げ飛ばす。そしてそのままジャンプしゴブリンファイターを鎧ごと牙で砕いた。
トップが一瞬で死に、パニックになったゴブリン達が全滅するには1分もかからなかった。
「すごいなーナナは!」
英斗はナナの全身を撫で回す。ナナはお腹を出してもっとなでろと言わんばかりに尻尾を振る。
撫で終わった後辺りを見渡すとそこには宝箱が置いてある。どうやら報酬らしい。英斗がその宝箱を開けると中には少し大きめな魔石が入っていた。
「うーん、まあこんなもんか」
英斗は魔石をリュックに入れた後、反対側にある鉄製扉を開け、6階に進む。
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