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高峰商会

「ようやく名古屋ね。ここまでの遠出は初めてだわ」


 有希も流石に疲れたのか、額の汗を拭っている。煤けた標識から名古屋の文字が読み取れる。


「名古屋も広いからなあ。人の多いところで情報収集しようか。とりあえずは名古屋駅付近にいけば人も多いかね?」


 英斗達は集落を探し、名古屋駅に向かう。やはり中心街に人は集まるのか、少しずつ人が増えてきた。

 英斗は近くに居た中年の男に声をかける。


「すみません、人を探してるんですが」


「今時珍しいな」


「高峰恭一郎という方を探してるんですが、どこに居るか知りませんか?」


 その言葉を聞き、少しだけ顔を顰める。


「知らねえな。他当たってくれや」


 男は冷たく言い放つと、足早にどこかに消えていった。


「今のどう思う?」


「知ってたうえで、教えたくないって感じね……。あの男、ここでも嫌われてるのかしら」


 有希は溜息を吐く。




 英斗達は、少し情報を得ようと歩いていると、前から子供達が楽しそうに走ってきた。


「こらこら、あまり走っちゃいけませんよ! 危ないですから!」


 大声を上げているのは二十代の女性である。両手には四歳程の子供を連れ、周りも子供だらけである。


「あら、こんにちは。すみませんねえ、うるさくて」


 と女性は英斗達を見て微笑む。


「いえいえ、可愛らしい子供達ですね」


「ありがとうございます。ほおずき児童園の黒崎(くろさき)です」


「月城英斗と言います。名古屋には児童園なんてあるんですね」


「他の土地から来られたんですか。見ない顔だと思いました。子供達を保護しているんですよ」


それを聞いた子供達が英斗に声をかける。


「兄ちゃん、どこから来たのー?」


「俺は、東京から来たんだよ」


「東京ー! すげー遠くからじゃん! なんでこんな遠くまで来たの? 旅行?」


 子供たちは、ナナに飛びついたり、英斗に話しかけたり自由奔放に遊びまわっていた。


「人を探しに、名古屋に来たんだ。ここに居ればいいんだけど」


「へー。見つかるといいな!」


 と少年はにっこりと笑う。


「ありがとうな、坊主」


 英斗も笑いながら返事をする。


「わざわざ、そんな遠くから来られたんですね。名古屋市内の人ならもしかしたら知っているかもしれません。お手伝いしますよ」


「ありがとうございます!」


「いえいえ、これもご縁ですから」


 英斗達は黒崎に連れられ、児童園に向かう。元々保育園として使われていた施設をそのまま使っているようだ。ジャングルジムで子供達が楽しそうに遊んでいる。子供達は数十人は居るように見える。

 応接間に通された英斗達は、ソファに座る。


「誰を探していらっしゃるのですか?」


「高峰恭一郎という男を探しています」


 黒崎はその言葉を聞き、少しだけ驚くような顔をした。


「……なるほど。彼を探してここまで。ちなみにどういう関係ですか?」


 殆ど変わらない態度のように見えるが、僅かに探るような声色になっている。


「ある道具を探しておりまして。それを知っているのがその人なんです。ですが、どうやら中々嫌われているようですね」


 英斗の苦笑いを見て、黒崎も警戒心を解く。


「そうですね。ここではあまり……。皆という訳では無いんですが。ここの現状を知らない方だと疑問に思うかもしれませんが。名古屋は今二つの大きな勢力があるんですよ。一つは高峰商会。もう一つが、ほおずき会です」


 この言葉で英斗はすべてを察した、先ほど話した者は皆ほおずき会側だったのだと。


「名前で分かると思うんですが、高峰恭一郎さんは高峰商会のトップです。元々名古屋は高峰商会の一強だったんですよ。ですが、九か月くらい前ですかね、華頂さんという方が来られて色んな人を助けて回ったんです。その活動がだんだん大きくなって、ほおずき会になりました。ここもほおずき会の援助で成り立っておりまして、華頂さんには頭が上がりません」


「そんな事情が……。ですが、それだけならあんな嫌われてるとも思わないんですが……」


 ただ二つのクランがあるくらいであそこまで嫌われるだろうか?


「元々高峰商会は色んな物を独占して規模を大きくしていったので元々嫌われていたんです。逆らう者は徹底的に潰すその苛烈さは恐怖の対象でした。ですが、その二千人を優に超える構成員で黙らせていました。ほおずき会の現在の規模は五千人です。それにより独占状態は崩れ、元々商会側に反感を持っていたほおずき会の人と、商会で揉めているんです」


「確かに、あの男ならそれくらいのことはしかねないわ」


 眉をひそめて有希が言う。


「そんなに仲が悪いんですね……」


「けど、華頂さんは抗争に反対しているので、まだ抗争になってはいません。ほおずき会は人数が多いとはいえ、子供や老人も多いので、戦闘員の数でいうと同じくらいなんですよ」


「人というのは、揉める生き物なんだなあ」


 また揉め事か、と溜息を吐く。


「ま、まあ今は小競り合いが精々ですので安心してください! 私も個人としてそこまで嫌いと言う訳ではないので! ですが、西側はほおずき会の者が多いのであまりその名前は出さない方がいいかもですね」


 黒崎が慌ててフォローを入れる。


「いやあ、色々教えていただき助かりました! 必ずお礼をいたします。何がいいですかね? 食べ物とかの方がいいですか?」


 英斗は頭を下げる。


「いえいえ、大したことは教えてないので。食べ物はうち余裕あるんですよ、皆さんが寄付して下さるので。よければ子供達と遊んであげてください」


「分かりました! 任せて下さい! ちなみに、恭一郎さんの居る場所分かりますか?」


「高峰商会の本部に居ると思いますよ。あちらです」


 どうやら名古屋駅東側のビルに居るらしい。簡単に教えて貰い、英斗達は恭一郎に会うため席を立った。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや〜高峰パパは崩壊したあともブレない人なんですね(笑) にしても余計悪化してそうですね(笑)
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