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懺悔

 夜の帳が降りた頃、英斗達は二十三区へ向かう途中、空き家で食事をとり各自空き部屋で休んでいた。何しろ激闘の後であり疲れも溜まっていたため早めに休憩を取ったのである。

 だが、英斗はベッドに座り今日の出来事を思い出し顔を曇らせていた。脳裏には、死ぬ間際の遊馬の顔が未だに離れなかった。


「俺が……俺が殺したんだ……。弱いせいで……遊馬も一緒に消し飛ばした」


 英斗の目元に涙が溜まっている。


 初めて人を殺した。今までこんな世界になっても人を殺すことは決してしなかった。間接的に殺すことはあっても、直接手を下したことは一度もない。そんな英斗の初めてが、親友であることはなによりも皮肉と言えるだろう。


 泣いても遊馬が帰ってこないことは英斗が一番分かっていた。だが、こんな人が毎日死んでいく世界でも、友の死というものは英斗の心を大きく抉りとった。

 突然ノックの音が響く。


「入るわよ、英斗」


 ドアを開け、高峰が顔を出す。それを見た英斗はすぐさま目元を拭いた。


「どうした、高峰?」


「有希って呼んで。私達の付き合いももう長いでしょう? それに私は英斗と呼んでるのに、高峰じゃ変に思われるわ」


「分かったよ、有希」


 そうだろうか、と思うものの素直に呼び方を変える。


「イフリート戦後、貴方ずっと変だわ。ただ遊馬が死んだだけとは思えない。貴方の心を苦しめる何かがあったのなら、一人で抱え込まないで教えて欲しい」


 高峰はそう言って英斗に迫る。


「そうだな――」


 英斗はそう言って、有希にイフリート戦の全貌を語る。遊馬が自分の命を賭してイフリートを止めてくれたこと。そして英斗が遊馬ごと、イフリートを殺したこと。

 それをただ静かに聞いていた有希は、話終わった英斗を優しく抱きしめる。


「辛かったわね」


 ただ、一言だけそう言った。

 その優しい声色に、英斗は今まで耐えていた何かが決壊したように、静かに嗚咽を漏らす。


「貴方は悪くないわ。もし貴方を責めるような馬鹿が現れたら、私がその舌を切り取ってあげる」


 見る人皆の心を奪い去るような妖艶な微笑を浮かべながら有希が言う。


「それはちょっとやりすぎだ」


 英斗は苦笑いを浮かべる。


「それに、遊馬が命を賭して止めてくれたから、貴方がイフリートを仕留めてくれたから私は今ここで生きているのよ? だから、そんな顔ばかりしないで」


 いつもどこか淡々としている有希の優しさに、英斗の心は少しずつ温かいものを感じる。


「ありがとう、有希。いつまでも泣いている訳にはいかないな。まだやることは沢山ある」


「そうよ。これからどこまで行かないといけないかも分からないんだから。泣いてる暇はないわ。けど、貴方ギルドマスターとしてそんなに長期間、不在にして大丈夫なの?」


「それなんだが……。後任に任せようと思う。ずっと不在じゃ締まらないだろうし。立派な後任も育っている」


 英斗は、脳裏に弦一を思い浮かべる。


「あら。男って権力が好きなのにあっさり手放しちゃうんだ」


「なに、元々成り行きでなったもんだ。俺が居ない間、ずっと守ってくれた男だ。きっとうまくいくだろう」


 英斗は申し訳なく思うが、このまま不在ばかりでは区民も不安であろう。


「私も……どうしようかしら」


 高峰も悩んでいるようで、小さく呟いた。

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