魔道具を探せ
「やっぱり魔物を生み出している者と、スキルを与えた者は違ったのか……。なぜ殺そうとするのに、力を与えたのか謎だったんだが、合点がいった。が――」
英斗は明かされる様々な事実にただ空を見上げた。おそらく嘘はついていないのだろう。だが、その話の壮大さについていけなかった。神同士の争いに、たかが人が介入などできるのだろうか。
「その言い方から、セレナーデ様はユースティア神から遣わされたのですか?」
「はい。私は分類的には魔物では無く、神獣という括りになります。スキルだけでなく、タワーにあった機械やワープポイントなどもユースティア様がお造りになられたものです」
微笑みながら、セレナーデが言う。
「なるほど。メシスとユースティア神の仲はやはり悪いんですか?」
「最悪です。お互い、相手の眷属を殺すことで力を得るので当然なんですが……」
「ある程度状況は理解しました。なぜこうなったのかも。そのうえで、どうしたらこの世界を以前のような魔物の居ない平和な世界に戻せますか?」
「中々難しい質問ですね……。メシスがいくら神とはいえ、あれまでの魔物をただ転移することは難しいはずです。おそらく転移を補助する魔法具がどこかにあるはずです。それを破壊すれば魔物が増えることを止めることができるはずです」
セレナーデの話では、魔物をこの世界に呼ぶには力を使うが、それを補助する道具をメシスはどこかに隠しているらしい。
「それを破壊すれば、転移が止められるって訳ですね。どこにあるのか分かりますか?」
英斗の言葉を聞き、セレナーデが顔を逸らす。
「分からないのですね……?」
「分かっていたら、私が破壊してます。その魔法具が、何個あるのか、どこにあるのかさえ分かりません」
「それじゃあ探しようがないじゃないですか……」
英斗は肩を落とす。
「ですが、魔法具は明らかに地球の物ではありません。通常とは違う魔力を放っているはずなので、近くにあれば判断は可能だと……思います」
少し自信無さげに言う。
「その魔法具を探す方法はこれから追々考えるしかなさそうですね。スキル『神の使い』について何か知ってますか?」
「ユースティア様は貴方に、そのスキルを与えましたか……。それは眷属の証とも言えるスキルで、神の力の一端を借りることができますよ」
「凄そうですね……」
「身体能力、魔力、貴方の元々持っていたスキルの力も上がっているはずです。ですが、最も大きいのは神力を使えるようになることです。魔力と違うものを剣を纏わせてみて下さい」
「え? 違うものって……アバウトすぎるんじゃ……」
戸惑いつつも、英斗は剣を抜き力を込める。だが、その剣を覆っているのはいつも見ている魔力にしか見えない。
「もっと神々しいイメージを。あらゆるものを照らし、輝かせるような光を想像してください」
セレナーデの指示を受け、英斗は目を閉じる。自分の力ではなく神の力を剣に宿すようなイメージを。すると、剣が眩い光を放ち始める!
「凄い……」
その神々しい光を見て、高峰が呟く。
「それが、神力です。これは魔力とは別のものですので、残量には気を付けてくださいね。神力は魔物、特に魔族に良く効きます」
「そりゃあ便利だ。使いこなせるようにならないとな」
英斗はにやりと笑う。
「英斗、これからどうするの?」
「そうだな……。なんとか魔法具を見つける方法を探そうと思う。セレナーデ様、ありがとうございます」
高峰の問いに、英斗は答えるとセレナーデに頭を下げる。
「いえ。我々ユースティアの眷属も魔法具について探してみます。なにか分かれば報告しますね」
皆セレナーデに別れの挨拶をした後、英斗達は去っていった。
セレナーデはその後ろ姿をじっと見つめていた。
「ユースティア様、彼に神力をお与えになるとは……。つまりそう言うことなんですか?」
セレナーデの言葉に返事はなかった。





