新たな力
「誰だぁ、お前?」
セレナーデを見た伽藍が、睨みつける。
「英斗さん久しぶりですね。セレナーデです」
「えっ!? セレナーデさん!?」
英斗は驚きを隠せなかった。なぜ人型なのか、先ほど何があったのか、疑問は尽きなかった。
「英斗、知り合いか?」
「この間話した神龍だよ。なぜか人型だけど」
英斗の言葉に皆が驚いた顔を見せる。
「あの神龍か……。確かに強そうだ」
伽藍はまだ信用しきれてないようだ。
「あちらで戦っていたようですが、誰と戦っていたのですか?」
英斗が尋ねる。
「それは……もう答えてもいいでしょう。魔人です。この世界を滅ぼそうと企んでいるね」
「ま、魔人!?」
魔人と言われても、何も分からない。ただ、敵だったのだろう。
「貴方達を始末しようとここまでやってきていたようでした。今回は私が邪魔したので帰ったようですが」
「それは……ありがとうございます」
英斗は頭を下げる。いまいち状況はよく分からないが、助けてくれたようだ。
「無事ダンジョンボスを倒したようだね。君が私に尋ねた疑問も全て答えよう。だが、その前に、ダンジョンコアを破壊した方がいい」
セレナーデの言葉に英斗は再び首をかしげる。その疑問には伽藍が答える。
「ダンジョンの最下層には、ダンジョンコアってのがある。おそらくさっきのボス部屋の先にあるんだろう。行こうぜ」
伽藍が言う。
「英斗さん、私は地上の西で待っていますね」
そう言って、セレナーデは去っていった。
英斗は、伽藍に言われるがまま先に進む。ボス部屋の先に、階段があった。階段を上がると、遂に頂上に辿り着いたのか小部屋に小さな光る玉が浮いていた。
「これが……ダンジョンコア」
英斗が光る玉に触れると、一瞬閃光のような光が放たれ、玉が光を失う。
それに伴い、脳内に機械音のアナウンスが響く。
『ダンジョンタワー踏破、おめでとうございます。これにより魔物の発生は止まるでしょう。パーティで踏破した場合、貢献した上位2人に力と、秘宝が与えられます』
そのアナウンスの後、英斗から力が漲る。
『貴方に与えられる新たなスキルは神の使いです。これからも世界のために動くことを期待します』
神の使いってなんだ? 英斗は昔のように疑問で埋め尽くされる。相変わらず何の説明もない不親切な話である。
そして、高峰の前にある指輪が生み出される。高峰と伽藍の貢献度は似たようなものだと思っていたが、左目を潰したのが大きいのだろうか。
「鑑定してみるわ」
高峰がそう言って、鑑定する。
『神の指輪 L級
神から与えられた指輪。付けている者が死んだとき、一度だけ復活させられる。復活時は生き返る場所をある程度指定できる』
「どうやら、一度だけ死んでも生き返れる指輪みたいね。ゲームみたい」
「確かに凄げえなそりゃ! そういや、イフリートを倒したアイテムどうする?」
伽藍がマジックバッグから大剣と刀を取り出す。
直径2mを越える巨大な大剣と刀であった。イフリートの凄まじい炎をそのまま固めたかのような真っ赤な刀身には、綺麗な赤い魔石が埋め込まれている。
『炎剣イフリート L (レジェンド)級
誇り高き炎龍イフリートを討ち取った英雄に与えられる大剣。魔力を込めると、刀身に炎が纏われるが、その炎はいかなる魔物も焼き尽くす』
『獄炎刀 L (レジェンド)級
誇り高き炎龍イフリートを討ち取った英雄に与えられる宝刀。その炎を纏った一閃は、あらゆるものを斬り裂く』
「その大剣は伽藍が貰うといい。俺は既にスキルを貰ってるし、高峰も指輪を貰ってるからな。ナナには申し訳ないが。刀はどうするかな」
『英斗が良いならいいよー』
「私はそんな大剣使わないから、伽藍が貰うといいわ。刀も、貢献度で言うなら英斗が貰いなさい。そこまで図々しくはなれない。英斗はスキルを貰ったんでしょ? なんて名前なの?」
「じゃあお言葉に甘えようかね。神の使いだってさ。なんの力かさっぱりだ」
「そりゃあ確かに分かんねえな。まあ俺は大剣使いだからお前らがいいなら頂くぜ。良い剣だ」
伽藍はどこか嬉しそうに大剣を見ていた。先ほどの激闘で愛剣を失っていたので、丁度良いのだろう。
確かに力も秘宝も貰ったが、失った者が大きい戦いであった。
「帰る? 神龍様が待ってるんでしょ?」
高峰がセーブポイントを指さす。
「そうだな。帰ろうか」
『帰るー』
「帰るか」
英斗達はセーブポイントで地上に戻る。
いくら失っても生きなければならなかった。それが生き残った者の使命だと、英斗は考えていた。
これで7章は終了です。ここまで見て下さった方全てに感謝を。本当にありがとうございます! 日々皆様の応援によって、執筆する力が湧いております。
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7章は今までで一番長い章になりましたね。8章からはこの世界の謎が更に少しずつ解き明かされる予定です。
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なにとぞ、よろしくお願いします。





