世田谷ダンジョン
英斗はリュックに食べ物などを詰め、ナナの背中に乗る。
「行くぞ! 目指すは世田谷ダンジョン!」
「ワウーーー!」
英斗の号令と共にナナが走り始める。その速度は車に勝るとも劣らない。車一台走っていない道路を銀狼が軽やかに走り抜ける。
ナナに乗ること25分、世田谷区に着いた。
「意外と早いな、けどダンジョンの場所が分からん。適当に聞くか」
と思い周囲を見渡すものの人っ子一人いなかった。
「どこも廃墟だなあ」
ナナに乗り適当に世田谷区を散策する。
「あれがダンジョンか」
明らかに現代の建物ではない洞穴が既存の建物を壊してビル群の間に存在していた。だが、その前には見張り番の男が槍を持って立っていた。
「こんにちはー、ダンジョンに入りたいんですが」
英斗はナナから降り、見張りに声をかける。
「見ない顔だな。お前どこのギルドのもんだ?」
見張りはいぶかしげな顔で英斗を見つめる。
「杉並です」
「杉並か……うちのギルドじゃないなら、入場料は中のドロップ品の五割だな」
見張りはニヤニヤしながら英斗に告げる。
「五割!?」
英斗はその法外な入場料に驚きを隠せなかった。
「ダンジョンの管理にもいろいろ費用がかかるんだよ、君。それともうちのクラン『聖騎士団』に入るかい? 入るなら2割でいいよ。お前銀狼連れてるしスキル『調教師』だろ? その銀狼よこせばうちのギルドに入れてやる」
足元を見たクラン勧誘をしてくる見張りに呆れつつ、人を馬鹿にしてナナをよこせという態度に怒りがこみあげてくる。
「出直してきます」
そう言って英斗はダンジョンを後にする。
見張りからの監視から逃れた後、英斗はナナに告げる。
「夜ダンジョンに侵入するぞ。なんでこんな世界になってまで誰かの決めたルールに従わなきゃいけないんだ」
「ワウ!」
こうして英斗達のスニーキングミッションが始まる。
日が沈み月明かりが仄かにダンジョンを照らす頃、英斗はダンジョンの出入り口の裏側に回り込むと、オークそっくりの人形を作りだす。しっかりとみると人形にしか見えないが深夜なら十分だろう。槍も生み出し、オーク人形に持たせる。
オーク人形を正面から見張りに向かわせる。
「なっ!? オーク!? なぜこんなところに!」
見張りの男は、槍を持ちオーク人形に襲い掛かる。英斗達は男がダンジョン入り口から離れた隙にダンジョンに入り込む。
入り口に入るとすぐ地下へと続く石造りの階段が地下へと続いている。
英斗達はダンジョンを求め地下への階段を下っていく。
「オーク人形壊れそうだな」
英斗は地上に置いてきたオーク人形が壊されかけていることに気づいた。英斗は逃げるよう指令を送る。
「あっ、逃げたぞ!」
オーク人形は見張りから逃走を開始した後、建物の裏に移動後一瞬に姿を消す。英斗が消し去ったのだ。
見張りはオーク人形を追い建物裏まで走った後オーク人形の姿が消えたことを訝しみ眉をひそめる。
「消えた……? なにかがおかしい……なんかいつものオークより弱かったような、うーん?」
見張りはそう呟きながら、ダンジョンの入り口へ戻る。だが、見張りは全く気付いていなかった。一人と一匹が侵入していたことを。
英斗達は50段を超える階段を下り地面に足をつけた。そこには洞窟が広がっている。
入り口前には謎の柱が立っていた。高さは1mほどであったが用途はよく分からない。だがその先には赤い石が埋め込まれている。
英斗はしばらくその柱を調べた後、現時点ではこの柱の意義は分からないと感じこれ以上の調査を諦める。
「おおー、いかにもダンジョンって感じだ! そういえばここが何階まであるのかも聞かず来ちまったな」
「ワウッ!」
ナナもわくわくしているのか、尻尾を振って喜んでいる。
「じゃあいこうか」
英斗はナナを一撫でした後、先に進む。
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