必ず俺が止めてやる
3人での戦闘は中々に苦しかった。空中に高峰が居たため、イフリートは地上と空中両方を気にしなければならなかったが、今は地上だけで良いのだ。
警戒するエリアが減ったイフリートは悠々と英斗達に自慢の技を振るっていた。
伽藍もこのままではジリ貧であることには気付いていた。今までは動きを止めるために足を狙っていたのだが、遂に自分の一撃で仕留めようと考えてしまった。
イフリートは爪を振るっているうちに、少しだけ首が下がっていた。
「こうなったら、俺が直接殺るしかねえ!」
伽藍は魔力を込め、大きく跳躍しイフリートの首元を狙う。
『そりゃあ悪手だろう、小僧』
イフリートは伽藍達の焦りを感じ取っていたのだ。首を狙いやすい様に下げ、伽藍達が釣られるのを狙っていた。
読まれていた大剣での一撃は、イフリートの爪にいとも簡単に弾かれてしまう。そして、もう片方の腕で伽藍の心臓を狙う。
「危ねえ!」
英斗は、ミサイルをイフリートの腕に放つ。それによりわずかに攻撃の軌道がそれ、伽藍の肩が抉られるだけで済んだ。
「ぐうっ!」
伽藍は肩にポーションをかけすぐさま構え直す。
『尻尾を巻いて逃げたらどうだ?』
イフリートは嘲るような声色で言う。
明らかに押されている……勝つどころか負けの二文字が英斗の頭をよぎる。一か八か、新必殺技を放つことを考えたが、失敗した瞬間負けが確定するだろう。
一度引いた方がいいのか、だがそれでは高峰が……色々考える英斗の顔が曇る。
英斗の様子を見て遊馬が叫ぶ。
「諦めるな、英斗! まだ負けちゃいねえ! 必ずこいつを止めてやる、だから安心しろ!」
「遊馬……」
今の状態でどうやって、30秒もイフリートを足止めできるのか。
『誰を止めるって? 小僧』
イフリートは次の獲物を遊馬に定めたのか、遊馬を狙い攻撃を集中させる。遊馬は懸命に守りを固めるが、少しずつ遊馬の体は傷だらけになっていった。
だがその激しい連撃に耐えきれず、遊馬の盾が大きく弾かれる。
「やばい!」
英斗の叫びも虚しく、その鋭い爪は遊馬の腹部を貫いた。
「ァ……」
英斗は高峰を思い出させる光景に言葉を失い、崩れ落ちる。
俺が撤退を決断できなかったからまた仲間が死ぬ、英斗は自らの決断を呪った。遊馬の背中からはイフリートの巨大な爪が生えており、明らかに致命傷である。遊馬も高峰も失い、勝てるビジョンも思い浮かばない。
ただ、頭が真っ白になっていた。
『雑魚が大口を叩くからよ……』
イフリートが笑うように言って、その手を抜こうとする。だが、遊馬はその手をがっしりと両手で掴み放さない。
「抜かせねえよ?」
遊馬は口から血を吐き、地面は血だまりに沈みながらも笑いながらそう言った。