二割
翌日、前回の新技から24時間経過に英斗は皆に新必殺技を見せる。
「おおー! 凄げえ威力だな……」
「凄まじいわね……」
『これなら勝てるよ!』
「英斗……『万物創造』普通に攻撃用スキルじゃねえか……」
皆その威力に驚きを隠せない。
「だが、これを当てるのは中々難しいぜ……。戦闘時の計画を練り直すか」
伽藍が言う。
「そうね。私達の攻撃は脚と翼に集中させる?」
英斗の新技を主軸に戦闘することを決める。最終的には高峰の案が採用され翼と脚を攻撃し動きを止めて、英斗の新技を当てることになった。
その後も英斗達はタワー探索を続ける。数日後、遂に50階のエリアボスの扉にまで辿り着いた。
今までもエリアボスの扉は重厚な鉄の扉であった。だが、今回の扉は今までより遥かに大きく、豪奢な雰囲気を醸し出していた。
今までと違う点は、いつもはセーブポイントにある自販機が扉の前にある。
「こいつは……ダンジョンボスの部屋だ。前、似たようなのを見たことがある」
伽藍が、重厚な鉄の扉に触れながら言う。2度ダンジョンを踏破している伽藍が言うのだ、可能性は高いだろう。
「全部で50階だったってことか」
「助かったわ……正直60階とかだと、間に合わない可能性もあった」
高峰が胸を撫で下ろす。
「遂に……か」
遊馬は複雑そうな顔をして扉を見つめていた。最愛の人の仇がこの扉の前に居ると考えると、仕方のないことだろう。
「時間もないし……今日は休んで明日戦おうと思うんだけど、皆は大丈夫?」
英斗の言葉に、皆頷く。
夜はログハウスで各自ゆっくり休むことにした。
英斗は居間でぼんやりと明日について考えていた。
「なんだ、寝れねえのか?」
伽藍が部屋から現れる。
「……そうかもしれません」
「じゃあ、一杯飲め。なに、明日に影響出る程飲ませやしない。一杯だけだ」
手には酒瓶である。
「分かりました。一杯貰いましょう」
苦笑しながら英斗は、杯を受け取る。
ゆっくりと酒を飲んでいる伽藍に尋ねる。
「明日、勝率はどれくらいだと思う?」
「勝率ねえ。二割ってとこか……大目に見てな」
伽藍は明るい声で言う。
「やっぱりそう思うかー」
英斗もそう思っていたのか、動揺もせずに机に頬杖をつく。
「なんといっても、時間が足りねえ。結局俺でやっと八十レベルだ。あいつは感覚だが……百とかで戦う化物だろう」
伽藍は注いだ酒を一息で飲み干す。
「だが、俺達には時間がない」
「後、半年あれば余裕をもって戦えただろうが……そうはいかねえのが人生ってもんだ。いつも敵がこちらに合わせてくれる訳がねえ。俺達は、今ある武器で精一杯戦うことしかできねえんだ」
「きっと皆も気付いてるだろうな」
「いいじゃねえか。俺達は『挑戦者』なんだろ? そう悲観するな。戦において二割勝率があればやる価値は十分にある」
伽藍はそう言って笑う。
「確かに。窮鼠猫を嚙むってことをあの化物に教えてやろう」
そう言って、英斗は酒を飲み干し立ち上がる。
いよいよ最後の戦いが幕を開けようとしていた。





