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互いを知る

 その夜、ログハウス内で夕食を食べた後、遊馬が席を立つ。


「ちょっと頭を冷やしてくるわ」


 そう言って、外に出ていった。英斗が追いかけようか悩んでいると、伽藍が止める。


「あいつはまだ仲間を失ったばかりだ、少し一人にしておいてやれ」


 伽藍も席を立つ。


「心配だが、一人の時間も必要か……」


「伽藍はあんな見た目してるけど、皆のことよく見てるわね」


 高峰が感心するように言う。


「そうなんだよなあ。あれで一番気がつかえて優しいんだよ。俺がイフリートの元に向かう前、伽藍は少しだけ手が震えていたんだ。彼も怖かったんだと思う。けど、俺のために動いてくれたんだ、本人は絶対認めないだろうがな」


 英斗は、薪を火にくべ暖を取る。パチパチと火から火の粉が飛んでいた。


「認めないでしょうね」


 そう言って、2人は笑い合う。しばらく話していると、伽藍が戻ってきた。


「何笑ってるんだ、お前ら」


 不思議そうな顔をする伽藍。


「なに、伽藍がいい奴って話してたんだ」


「なんだそりゃ」


「皆はなぜタワーを踏破したいのか、お互いに話さないか? 連携も勿論大事だが、お互いを知ることも大事だろ?」


 英斗が提案する。


「……まあな。いいぜ。遊馬が戻って来たら話そうか」


 しばらくして遊馬が戻って来た後、先ほどの話を伝える。


「別にいいが、俺の目的は知っているだろう?」


「遊馬は聞くだけでいいさ」


 言い出しっぺの英斗から話す事になる。


「理由は勿論、皆と同じでスタンピードを食い止める、町を守るためさ。けどもう一つ踏破しないといけない理由があってな。山梨県にいる神龍に、この状況をなんとかするよう頼まれたんだ」


「神龍が現れたのは聞いたことあるけど、会ってたんだ。神龍は助けてくれないの?」


 高峰が疑問を口にする。


「人間が解決しないと駄目らしいんだよな」


「手を貸せないのか、お前らで解決しろ、って方針なのか分からねえな」


「それもいまいち分からん。だがその頼みを叶えたら、なぜ世界が、文明が崩壊したのか教えてくれるらしい」


 英斗の言葉に皆驚いている。


「まじかよ……」


「それは私も気になるわ。なぜこんな世界になったのか、私達には知る権利があるはずよ。私にも教えてくれるわよね?」


 高峰が圧をかけながら、尋ねてくる。


「神龍が教えていいって言うなら勿論教えるが……」


 英斗はたじたじである。


「英斗にはそんな目的があったんだな」


 と遊馬が頷いている。


「皆を救う、って理由以外もあったんだ。すまないな……」


「何謝ってんだ! 目的が高尚ならいいってもんじゃねえだろ!」


 伽藍が大声で肯定する。


「別に責めてる訳じゃないさ。俺なんて元々エクセリアが行きたいって言ったから来ただけだしな……」  


「私が踏破したい理由は、中央区の人達を守るためよ。あそこはこのスタンピードを延々と耐えられるような強さはない。今も心配でたまらないわ……」


 そう辛そうな顔で溜息を吐く。


「高峰って、杉並区に居たよな。ずいぶん中央区の人達に肩入れしてるな」


 英斗が言う。


「あの後、自由に転々としてたのよ。そこで中央区の人達に出会ったんだけど、皆優しくて……。良い人ばっかりなんだけど、だから心配でね」


「そういえば、会議の時おばちゃんが高峰についてたな」


「やす子さんね。心配性で会議の時もついてきてたのよ。ダンジョンタワーの時も危ないからって最後まで引き留められたわ、もう」 


 そう言って語る高峰の顔は朗らかで年相応の女の子の顔であった。

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