自分が未来を見るために
皆は今後について話し合う。
「まず絶対的に足りてないのがレベルだろうな」
伽藍が溜息を吐く。
「俺は62だ」
「私は60」
英斗の返事に高峰が呼応する。
「俺は64だったと思う」
遊馬は思い出すように言う。
「俺が69だ。誰も70に達してすらいねえ。あいつは俺の一撃を受けても大して効いていなかった。このままじゃ勝負にすらならねえよ」
「俺もそう思う。まずはレベル上げによる個人の能力の底上げだろうなあ。作戦はその後だ」
英斗は現状を分析する。
「レベル上げって、36階でするの?」
「それでいいと思う」
「けど、イフリートは37階で出てきたことを考えると、もっと下の方がいいんじゃない?」
高峰が提案する。
問題はイフリートである。奴の住処が分かっていない。いきなり36階でエンカウントして即死コースがあるのだ。
「確かに安全を考えるなら下層だと思う。だが、レベル上げの効率を考えるとやはり上階だろうな。すぐに外に出られる36階がまだ安全か?」
英斗が唸りながら言う。時間が無限にある訳では無い。
「イフリートを警戒しながら、レベル上げだな。おそらくだけどあいつはレイズと同じように自由にタワー内に移動できるんじゃないか? そう考えると下層が安全ともいいきれねえしな」
伽藍はそう考察する。
「そうじゃないと、あいつが37階にいる理由が分からないものね。イフリートがダンジョンボスだと仮定していいと思う。」
「最低でも80は必要だと思う。対峙した際の強さを考えると……。それでも勝てるかは分からないけど」
遊馬が頭を掻く。
「連携と、レベル上げを並行してしましょう。最上層に上がることも考えないと……」
イフリート討伐は目下の目標であるが、踏破もしなければならない。
「今日から36階層を主軸にレベル上げと連携と行こう!」
英斗の宣言の後、皆は動き始める。
英斗達がタワーに向かっていると、多くの者がこちらを見ながら噂話をしている。
「うわっ、雷神が壊滅したのって本当だったのかよ……。彼等でも負けるような魔物がいるなんて……もう無理なんじゃないか?」
「うちのパーティはもう下の階層でDCだけ集めてのんびりすることにするわ。こっちの方が他より安全だしよ」
「うちは、もう田舎に逃げるよ。青森まではスタンピードの魔物達も流石に来ないだろう」
「遊馬の奴、他の仲間が死んだらすぐにハウスマンのパーティに乗り換えかよ。誰でも良かったのかね?」
最後の言葉を聞き、遊馬が手を強く握りしめる。
「何見てんだコラア!」
伽藍がこちらを見て話している者達を睨みつつ叫ぶ。その言葉を聞いた者はそそくさとに逃げ出す。
「遊馬、お前は何も悪いことなんてしてねえ。堂々としてろ」
そう言って、伽藍は遊馬の背を叩く。
「ありがとう、伽藍」
「敵討ちってのは大事なもんだ……。自分が未来を見るためにな。過去を清算しないと、未来を見れねえ奴ばっかりだからな」
伽藍はそう呟いた。その後、英斗達は36階に移動した。





