新メンバー
しばらく泣き続けた後、遊馬は疲れと痛みで眠りに着いた。英斗も疲れていたのか、ベッドの横で倒れ込むように寝てしまった。
翌日、太陽の光が窓から差し込む頃、英斗は目を覚ます。寝てしまった自分に驚くもすぐさま遊馬を探す。
「い、居ねえ」
英斗の脳内に自殺の二文字が思い浮かぶ。英斗は遊馬を探すため立ち上がる。すると、すぐ遊馬が洗面所から現れる。
「ゆ、遊馬……」
英斗の顔を見ると、遊馬は気まずそうに顔を逸らす。だが、すぐに英斗の顔を見て頭を下げる。
「昨日はすまなかった。せっかく助けてくれたのに、あまりにもひどい態度をとってしまった……」
「気にするな。あんなことがあったんだ。いくらでも受け止めてやる」
「ありがとな、英斗……」
しばらく沈黙が流れた後、意を決したように遊馬が言う。
「お前の言う通りだ、英斗。俺は絶対にあいつを殺す。そうじゃなきゃエクセリアに合わせる顔がねえよ……」
「そうか。力は貸す。エクセリアさんの仇を取るぞ遊馬。必ず仇を取って、遊馬も生きて帰ろう」
「ああ。死ぬつもりは毛頭ない。だが、お前も戦うつもりなのか? あんな化物見たのに……」
遊馬は驚いたような声で言う。どうやら1人で行くつもりだったらしい。
「正直今でも怖いよ……。だが、俺は自分を許せない。震えて、何もできなかった自分がな。そして、このまま逃げかえって静かに滅びていく日本を見ているつもりは無い」
英斗は、自分のパーティ以外にダンジョンタワーを踏破できる者はいないと考えている。いつまで日本は持つのか、それは英斗にも分からなかった。
「ありがとな……」
「まだ何もしてないだろ。皆に紹介するよ。伽藍と、高峰がまだタワーに上る気かはわからないけどな……」
普通はあんな化物見たら二度と上る気にはならないだろう。バトルジャンキーか馬鹿のどちらかである。
「普通はそうだぜ、あんなの見ちまったらな」
「俺もそう思う。無理強いはできないから、最悪2人とナナで上ろう」
ナナはすぐ下の階に居たようで、遊馬が無事起きたことを喜んだ。
『無事でよかったよ、遊馬』
「心配かけたな、ナナちゃん」
そう言って、ナナの頭を撫でる。
『伽藍も、高峰も他の部屋に居るよ』
「そうか。少し、今後について話そうか」
英斗が2人を呼ぶと、少しして皆一箇所に集まった。高峰は疲れているのか、少し肌色も悪かった。伽藍はいつもと変わらないように見えるが、目元からは疲れを感じさせる。
「皆、集まってくれてありがとう。今後についてなんだが……俺はまだ踏破を諦めていない。イフリートを仕留めて踏破するつもりだ。おそらく勝ち目の方が低い戦いだと思う。だから、2人には今一度、今後も踏破を目指すか考えて欲しい」
英斗は穏やかに言う。
「……」
高峰も、伽藍も沈黙している。そしてその沈黙を破ったのは高峰であった。
「心配されなくても、私は英斗が降りても一人で踏破するつもりだったわ。ここで私達が降りる意味くらいは分かってる」
高峰は言う。
「俺も勿論参加だ。途中で逃げる訳ねえだろう? 今度こそあいつの太い首切り落としてやるよ」
そう言って、伽藍は笑う。
『英斗はそう言うと思ってたよ……。ついて行くよ、どこまでも』
ナナは言う。
「そうか……皆覚悟していたのか。変な事を言って済まなかった。新しい仲間を紹介したい、右京遊馬だ」
「遊馬です。すみませんが、パーティに入れて下さい。役に立ちます。必ずエクセリアの仇を……取るつもりです。よろしくお願いします」
そう言って、遊馬は頭を下げる。それを見た伽藍が拍手をする。
「いいんじゃねえか、どんな理由でも。強い奴は大歓迎だ。よろしく頼むぜ」
それを見て、皆も拍手をする。
「よろしく」
『よろしくね』
こうして英斗パーティに新しい仲間が増えた。必ずやイフリートを倒し、ダンジョン踏破を。そう誓い合った。





