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お前の死なんて望んじゃいねえ

 遊馬をベッドに寝かせて数時間後、遊馬が目を覚ます。体を起こすと、真っ青な、能面のような顔で周囲を見渡す。だが、遊馬が会いたい者はその場には居ない。

 英斗はその鬼気迫る様子を見て、声をかける。


「遊馬……」


 英斗の声に気付くと、遊馬は英斗の胸倉を掴み、絞り出すような声で尋ねる。


「英斗……皆は……エクセリアはどこだ?」


「それは……」


 英斗は、それ以上言えなかった。


「どこにいるんだ? まだ36階であの化物と戦っているのか? 早く助けてやらないと……エクセリアが待ってるだろ?」


 遊馬は立ち上がろうとする。


「おい、まだ怪我は治ったが動けるような状態じゃない。安静にしてろ!」


「他の部屋か? まあ、男女同じ部屋ってのは良くないかもしれねえけどよ……」


 遊馬は周りを見渡しながら、少し震えるような声で言う。顔はまだ真っ青である。


「落ち着いてくれ、まずは。あとでゆっくり話そう」


「ゆっくりってなんだよ! エクセリアは、皆はどこなんだ! 教えろ、英斗!」


 遊馬は、英斗の胸倉を掴みながら怒鳴る。


「……皆あの化物に……やられ……てしまったよ……」


 英斗はもはや隠しきることなどできないと感じ、絞り出すような小さな声で言った。


「おい、こんな時に下らないこと言うな!」


 遊馬は血走った眼で英斗を睨む。


「……」


 英斗は何も言えなかった。その様子を見て、遊馬の頬に涙が流れる。


「う、嘘じゃないんだな……」


「ああ」


「どうして……どうして俺を助けたんだ! なぜあそこで、エクセリアとともに死なせてくれなかったんだ!」


 遊馬は涙を溢れさせながら叫ぶ。


「お前を見捨てられるかよ! 遊馬、お前は今辛いだろう。地獄のような苦しみだろう。生き残ったことを後悔しているかもしれねえ。だが、エクセリアはお前の死なんて望んじゃいねえ! お前がすることは嘆くことじゃねえ! エクセリアの仇を、あの化物を仕留めることだろ!」


 英斗も叫んだ。その目には涙で滲んでいた。


「ぐぅ……ぅっ……」


 遊馬は布団に顔を埋め、嗚咽の声を漏らす。夜の一室にただ嗚咽の声だけが響いていた。

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