我羅照羅総長弦一
次の日、昼頃英斗が家から出ようとした時、英斗はあることに気づきナナを撫でる。
「囲まれてるな」
英斗の言葉を聞き、ナナは体をあげ臨戦態勢に入る。
「ワオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」
銀狼の咆哮が東京の空に響く。英斗達は外に出て、廊下から取っ手に飛び乗り下を見る。そこには、50人を超える構成員が英斗のマンションを囲っていた。
「やあやあ皆さまお揃いで。俺一人なんかにどうも」
英斗は我羅照羅達を煽る。
「てめぇ……調子乗んなよ!」
我羅照羅の構成員が怒鳴る。そこで一人の少年が一歩前に出る。
「俺は我羅照羅総長の弦一だ! あんたが月城か。強そうだな……うちに入らないか?」
我羅照羅のトップ、弦一が言う。
あいつがトップか……、英斗は冷静に現状分析する。
「お前がトップか。入るのもありだが、俺は自分より弱い奴の下に付く気はない。自分を従えるんだ、それなりの男じゃないと自分の命は任せられない。当然だろ?」
英斗は内心ドキドキしながら言う。 それを聞いて、弦一はにっこりと笑う。
「分かる! 下に付くなら、圧倒的に強い男に付きてえよな。やっぱりトップってのは圧倒的強さで、カリスマで皆を惚れさせるような奴じゃねえとよ。そんな強い男を探してるんだが、まだ出会えてなくてな。おかげで部下ばかり増えちまったよ」
と無邪気に言う。
「カリスマ性があるとは言わねえが、俺はお前より強い」
と英斗がはっきりと言う。
「それは楽しみだな……。そちらの要望通りタイマンはろうぜ! 俺は自分より強い奴を探してるんだ……。やっぱただのスカウトで終わるわけねえよな、強い男が揃っちまったらよ!」
「ハハ、その通りだ。普段は人同士で戦うことはしないんだが……お前となら楽しめそうだ。やろうぜ」
英斗もすっかり弦一の熱に当てられ高揚していた。弦一とはそういう男なのである。
次の瞬間、弦一の体から禍々しい黒炎が噴き出す。
「総長の戦闘が始まるぞ! お前ら離れろ!」
それを受け、我羅照羅の男達は皆弦一から離れる。
「念のため言っとくが、降参は早めにしねえと、死んじまうぜ?」
その瞬間黒炎がものすごい勢いで4階にいる英斗を襲う。
「ナナ、離れてろ!」
英斗達は当たる直前4階から飛び降りる。飛び降りた英斗に弦一は高速で向かってくる。その両手には黒炎を纏っている。
弦一の蹴りを英斗は、鉄壁で受け止める。すると鉄壁が黒炎に侵食されていく。英斗は地面から鉄の棘を生み出し、弦一を襲う。
弦一は後退することでそれを躱した。
「鉄を操る力か?」
弦一は笑う。
英斗は4階に目を向ける。まだ黒炎は消えていない。先ほどの鉄壁もいまだに黒炎が剝がれない。
「消えない炎か」
英斗が呟く。
「ご名答。一度体に触れたら最後だぜ? あんたが死ぬまで消えねえからな」
弦一が手を振り下ろすと、再び黒炎が襲い掛かってくる。
英斗は土壁を生み出し、黒炎を防ぐ。
鉄は土より魔力を喰う。そしてどちらも一度防ぐと使い物にならないことを考え、土壁を生み出す。
「ゴーレム、いけ」
英斗は地面から三体の石製のゴーレムを生み出す。人の体を模した石製人形である。ゴーレムは一目散に弦一に襲い掛かる。
「おいおい、あんたいったいいくつスキルがあるんだよ」
そう言って、黒炎を球状に変形させゴーレムに向けて放つ。ゴーレムは黒炎に包まれ瞬く間に火だるまになる。
「ゴーレムだから、その程度じゃ止まらねえぞ?」
ゴーレムは黒炎を纏ったまま弦一に襲い掛かる。弦一は黒炎を手に纏ったまま石製ゴーレムを殴り砕く。
「こんなおもちゃでやれると思ってんのか?」
弦一はイラついた口調で睨みつける。どうやら弦一は肉弾戦も得意のようであった。
英斗は久しぶりの強者との戦闘に心を躍らせ静かに笑った。
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