影虎
英斗達は32階以降を探索していた。
今まで難なく倒していた魔物達であっても強化されていることもあり、いい鍛錬になっている。
「おらあ!」
伽藍はその大剣を思い切り振り回す。それにより無数の虎の胴体が両断される。
「数が多すぎるわね」
英斗達は、大量の黒い毛並をした虎に囲まれていた。鑑定結果は以下である。
『影虎 B級+
影魔法を操る虎。影に潜り、冒険者の首を刈り取ることを得意とする』
地下遺跡は影も多く、どこから影虎が襲ってくるかさえ分からない。影から飛び出してきた虎の頭に思い切り剣を振り下ろす高峰。嫌な音と共に、一体を永遠の眠りにつかせた。
巣が近くにあったのか、50匹以上既に殺しているが一向に減る気配が無い。
「群れの長を狩ろう。これじゃきりがない」
英斗達は長を探すも、中々見つからない。長などいない種族なのか、それとも長は前線に出てこないタイプなのか。
「居ないにしては中々統率が取れている気がするわ」
高峰の言葉に英斗も頷く。
「俺が長ならどこから指示を出すかな?」
英斗は周囲を見渡す。どこも囲われているが、右側だけ少し数が多く厚みを感じた。何かあった時のために自分の周囲には多く配置したはずだと考える。
英斗は影虎が多い右側に突っ込む。
そちら側に通常の個体より強い2匹が居た。だが、長であるかと言われると疑問が残る。その2匹は周囲を常に警戒しており、時折他の個体に指示を出している。そしてその2匹の間には通常より深い影があった。
「臭うぜ」
英斗はその2匹の間の影に、特大の火の玉を生み出し、放つ。地面の影に着弾すると、獣の悲鳴が轟く。
「ガウウウウ!」
影から出てきたのは、通常の個体より一回り大きい影虎である。
「逃がさん」
英斗は、まるで柱のような巨大な鉄槍を生み出し、影虎の腹部に叩き込んだ。
「ガアアア!」
直撃した長であろう影虎が絶命する。側近であろう2匹の影虎が英斗の首元を狙い襲い掛かる。
「甘い」
英斗は地面から巨大な鉄の両腕を生み出すと、2匹をハエ叩きのように叩き潰す。
「やるじゃねえか! 途端に混乱し始めたぜ」
伽藍は混乱した影虎を大剣で仕留めていく。残りは皆散り散りになり、勝負は決まったと言っていいだろう。
一戦が終わり、一息ついていると高峰が言う。
「B級とは言え、数が多いと疲れるわ」
「しかもBとは言えない強さだからなあ」
「強化されたS級もこれから出るだろうがな。あのナーガラージャみてえにな」
『強そうだねえ』
現在は33階にいた。英斗のレベルも61に上がっている。英斗達はレベル上げも兼ねながら、どんどん上がっていった。