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俺達が踏破する

 英斗達はその後『雷神』達に合流した。一息つこうと、皆で昼食を食べることとなった。


「いやー、英斗もうここまで来たんだな! 最速だな、俺もうかうかしてられねえよ」


 そう言いながら、サンドイッチを食べる遊馬。


「俺こそ、驚いたよ。雷神があそこまで強いとは……。一瞬でナーガラージャを仕留めるなんて、中々できない」


 しかも通常より強い個体であるためなおさらである。


「ちょっと皆さんの前なので張り切っちゃいました」


 そう言って笑うエクセリア。


「あ、遊馬。またマヨネーズ口につけてるよ」


 そう言って、エクセリアが遊馬の口元についたマヨネーズをハンカチで拭う。


「あ、すまん」


「もうー、ちゃんとしてよー」


 そう言って笑う。その微笑ましい様子を皆は温かく見守っていた。


「パーティ『雷神』は今何階まで上がったんだ?」


 伽藍も食べながら聞く。


「うちは今36までですねえ。今はここらへんでレベル上げをしながらゆっくり上がっていく予定です。まだまだ先は長そうなので」


「あんな強いんだから、すぐ上れないの?」


 英斗が尋ねる。


「まあ、まあ。うちにも色々あるわけですよ。英斗も遂にパーティを組んだんだな。しかも最近話題になってた強い人達と。俺達もうかうかしてられねえなあ!」


「はい! 私は誰が踏破しても別に良いんですが……一応トップパーティと言われてるので、このまま踏破もうちが貰いますよ! って言っておきます」


 とエクセリアが言う。

 その後も軽く情報交換をした後、英斗達は『雷神』と別れた。




「エクセリアの強さに気を取られていたが……遊馬とやらも相当だな。ナーガラージャの渾身の一撃を難なく止めていた。まさしく鉄壁だ」


 伽藍は去っていく雷神達を見ながら、感心するように言う。


「ああ。エクセリアが安心して攻撃に移れるのは、遊馬への信頼があってこそだ」


 英斗は自分のパーティこそがトップだと、一番だと考えていた。だが、それは慢心であった。


「まあ、私たち以外でも踏破できそうなパーティが居たのは良い事でしょう? 私の一番の目的はスタンピードを止めることだし」


「確かにな。止めて貰えればそれが一番いい。それは間違いない。だが、男ってのは、一番になりたい生き物なんだよ。俺達が踏破する! それは変わらねえ」


 英斗ははっきりと宣言する。


「その通りだ! 良く言った。そうじゃなくっちゃな。誰かが踏破してくれるだろう、なんて考えでは何も守れねえもんだ」


 伽藍は英斗と肩を組み、大声で笑う。英斗達は気を引き締めつつ、上を目指す。






 英斗が31階に到達してしばらく後のこと、文京区には来客があった。


「マスター、またあの人来てますよー!」


 ギルドでスタンピードの後始末をしている乙丸(おとまる)(てん)は嫌そうな顔を隠しもしなかった。


「ああ……すぐ行く」


そう言って、下に降りる。下には、綺麗な髪をした美人が手を振っている。勿論角も生えていなければ、肌も白い。


「あの美人、いったいどういう関係なんですか? やっぱり恋人なんですか?」


 受付をしている女性が乙丸に尋ねる。イケメンなギルドマスターを狙っている女性は多い。さりげない探りである。


「いやいや、本当にそんな関係じゃないから」


 苦笑いをして答える、偽りの無い本音である。むしろ勘弁してくれ以外の感情が無い。


「乙丸さん、少し寄らせていただきました。すぐ終わりますので、少しマスターをお借りしますね」


 その美人は、受付嬢にそう言うと、乙丸と執務室に向かう。部屋に入った瞬間、その笑顔は鳴りを潜め、冷たい声で言う。


「何か情報は入ったか?」


 この美人こそ、姿を変えたサンドラに他ならない。


「……うちから向かったギルドマスターのうち、千代田区の妻夫木は30階で敗走しました。多くの戦力を失い、当分は再挑戦も厳しいかと。杉並区の月城は、江東区の伽藍、中央区の高峰とパーティを組み31階を越えたと聞いております。それ以上はまだ分かりません」


 その報告を聞き、しばらく何かを考えるようなそぶりを見せるサンドラ。


「そいつらか、レイズを破ったのは。月城か……覚えたぞ。人間風情に30階を越えるものが複数でてくるとは……おとなしく滅びればいいものを。人間というものは本当、しぶとさだけは一人前だよ」


 そう溜息を吐くと、サンドラは去って行ってしまった。

 乙丸はサンドラが去った後、大きく息を吐く。その手は汗だらけであった。


「やっぱり無理だ……」


 乙丸は、サンドラに情報を流す事を辞めるため、サンドラを殺すことを計画していた。だが、実物に会った瞬間、自分など一瞬で殺されるほど格が違うことを再認識した。




「最上階まで昇られてしまった場合は、私も動くか……。まだ31階ならしばらく先だろうがな」


 サンドラが仲間の元へ戻る。


「何か新しい情報はあったか?」


 サンドラに話しかけた男にも大きな2本の角があった。そして見る者誰もが息をのむような美しい容姿をしていた。まるで作り物のように。


「31階まで上がられたらしい」


「ほう……人も成長しているもんだな」


「お前はのんきだなあ。踏破されたら面倒だぞ」


 サンドラは呆れた顔をする。


「人間如きに、あいつがやられると思うか?」


「……まあな」


 サンドラ達は羽を生やすと、そのまま何処かへ飛び立っていった。

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