星喰
「ハハハ、楽しいな。だが、戦い方が気になるな。俺の動きを止めようとした戦い方だ」
レイズは英斗の戦い方について指摘する。
「あるんだろう、隠し玉が。使っていいぞ。動きを止めた上で使いたいものが」
歯をむぎだしにして笑う。
「……舐めているのか?」
英斗は眉を顰めて言う。
「違うさ。敵の本気の、最高の一撃を粉砕し勝つ。これ以上ない勝ち方だ。こちらも最強の一撃を使う。はやくあの狼を助けたかろう?」
レイズは今までの戦闘の楽しむ様子が鳴りを潜め、ちりつくような雰囲気を身に纏う。おそらくレイズも本気の一撃をぶつけるつもりだ。
「後悔するぜ?」
次の瞬間、英斗はホルミスの指輪から魔力を吸い上げ魔力を全回復する。
「俺の相棒に手を出した奴は皆こいつに撃ち抜かれると決まってんだよ! 『超電磁砲』!」
英斗の叫びと共に、全長10mを越える超巨大砲台が現れる。その無骨で重々しい雰囲気は一目で巨大兵器を彷彿させる。
「星喰!」
それと同時に、レイズは魔力の全てをその大剣に纏わせる。既に視認できないほど輝いている大剣で渾身の一振りを放つ。
放たれた一撃は幾重にも編み込まれた光の線が絡み合う一つの巨大な光の塊となり、英斗を食らい尽くすかのように襲い掛かる。
砲台からはまるで光のように砲弾が放たれ、その一閃はレイズの星喰を貫き消し飛ばす。その勢いは止むことなく。その大剣をも粉砕しレイズの腹部を貫いた。
「ガフッ!」
腹部を貫かれたレイズの口から血が出る。一瞬よろめいたものの折れた剣を地面に突き刺し倒れることなく英斗を見つめている。
「……やるじゃねえか」
レイズはそう呟いた。大剣とぶつかったときに僅かに軌道が変化したのか、右腹部に命中したようだ。
「お前の顔……覚えたぜ。また殺り合おう。今日はお互い満身創痍のようだからな」
そう言って、レイズは英斗達が入ってきた扉の方に走り去る。
「待て! 誰が逃がすか!」
英斗は叫ぶ。だが、リヴィスの首飾りで全ての魔力を根こそぎ吸われてしまった。残っているホルミスの指輪から魔力を得るも、体全身が軋んでいる。
英斗の叫びもむなしく、レイズは扉から去って行ってしまった。
「逃がしたか……」
英斗は周りを見渡すも、既に3体の魔物は葬られており、こちらの勝利は時間の問題であった。
「ナナ!」
英斗はナナの元へ走る。自動人形に治療させたためか怪我自体は良くなっていた。
『ごめん、油断しちゃった』
ナナはそう言うと、項垂れてしまう。
「いや、あれは誰でもああなる。まさかボス部屋に第三者が入ってこれるとはな……。どういうことかは分からないが……とにかく無事でよかった」
そう言って、ナナの頭を撫でる。
話し合っていると、高峰の一撃が最後の炎神の頭を砕いた。どうやら終わったらしい。
「どうやら無事だったようだな。あの乱入した魔物も中々強そうだった」
伽藍が血まみれになった大剣を担ぎながら、こちらにやってきて言う。
「すまん、そっちに迷惑をかけた」
「別に構わないわ。それにおそらくあのオーガが最も強かったし」
高峰が言う。
「おそらくそうだろうな。人語を完全に話す知能と、自由に扉を行き来できる力。いったいなんだったんだ?」
英斗は呟く。
「このダンジョン製の魔物じゃあねえだろうな。ここで産まれた魔物が、自由に扉を行き来出来たら危なくてかなわねえ」
「そういえばあの魔物、サンドラが殺したがるとかなんとか言ってたな。何か俺達が知らないところで動きがあるような気がする……」
「サンドラ……?聞いたことねえなあ。魔物達も俺達を殺すために動いてるってことかね。返り討ちにしてやるがな」
そう言って伽藍は笑う。
「私も聞いたことないわ。まあ考えるだけの情報はそろってない。せっかく30階を越えたんだから、素直に喜びましょう」
高峰が両手を合わせ言う。
「ちなみにドロップアイテムはこれだ」
そう言って、伽藍が見せた物は風神が持っていた風を出す袋である。
『風神の風袋 E級
風神の持つ風袋。魔力を込めることで風を出す事で出来る。時に嵐すら起こせるほどの風力がある』
英斗が鑑定するも、どうやらそのままのアイテムのようだ。
「俺は役に立ってないので、2人のどちらかが貰ってください」
「俺も要らねえよ。高峰、ドライヤー代わりにでも使え」
伽藍が風袋を高峰に投げる。
「これ熱風出るの……?」
高峰は袋を持ちながら首をかしげる。
「余計な邪魔は入りましたけど、遂に俺達も31階に行けるわけですから、頑張りましょう!」
英斗は仕切りなおすとそのまま31階へ向かう。
遂にトップパーティ『雷神』のいる31階へ。