パーティ結成
「……本気で言ってんのか?」
伽藍は少し驚くとそう言った。
「はい。本気です。俺はナナとのコンビにこだわりがあるわけではありません。組むに値するような、背中を預けられるような人たちが居なかっただけです。2人なら信じられると思っての話です」
英斗は真剣な顔で言う。
「……まあ、実力は十分だわな」
伽藍は考えるように、顎に手をあてる。
「踏破の褒美である、比類なき力と秘宝はどうするんだ? 分けられる物とは限らねえぜ?」
「それは、物や力を見てから無いとはっきりと言えません。ダンジョンボスを狩った際の貢献度や話し合いで決めるしかないのではないでしょうか?」
「そこを曖昧にすると、後で揉めるぜ?」
「では、分けることができるものなら分けましょう。分けられないものならば、ダンジョンボスの貢献度で決めましょう。各自が自分以外の者を評価する形ではいかがですか?」
英斗の言葉を聞き、再び考え始める。
「私は別に構わないわ。30階でこれなら、この先仲間が必要になるとは思っていたし。時間が無限にあるのならのんびりソロでも良かったけど、あまり時間をかけすぎると日本が滅びちゃいそうだしね」
高峰が言う。
「……分かった。条件もそれでいい。そもそもこのパーティの人間に、役に立たないのに権利だけを主張するような奴等は居ねえと思ってのことだ。頼むぜ、お前達」
伽藍もパーティ参加を認めた。ここにきて遂に、3人のギルドマスターが手を組んだ新たなパーティが誕生した。
「2人ともよろしく頼む!」
そう言って、英斗は手を伸ばす。3人は固い握手を交わす。
『やったー! 遂に最強パーティ結成だね!』
ナナが皆に念話を飛ばす。その念話に驚いたのは、念話の事実を知らなかった高峰である。
「えっ!? ナナちゃん喋れるの!?」
驚愕の表情を見せる。
『喋れるよー! 有希ちゃんよろしくね!』
「ちなみに俺は、お前が俺が居ない間にナナを撫でていたのも知ってるぞ」
英斗の指摘に、顔を真っ赤にした高峰はその後しばらく言葉を発する事なく蹲ってその場を離れなかった。
その夜、居酒屋で英斗達は今後について話し合っていた。高峰とナナはジュースである。
「この4人なら絶対に30階もクリアできるはずだ」
ビールを一口で飲み干した伽藍が言う。
「実際どんな敵なんですか?」
「4体の魔物だ。1体1体がS級の中でもかなり厄介なレベルのな。そして連携がさらに厄介でな。全員違う魔法を使いやがる」
「風、雷、炎、水をそれぞれ操るの。ソロだと四方から襲われるのよ」
溜息を吐く高峰。
「なるほど……。それは中々面倒ですね」
伽藍が倒せなかったのも納得である。良くソロで2体も殺せたレベルだ。
「だが、今ならこっちも1体ずつやり合える。強ええが、1体ならなんとかなる」
伽藍はそう言って、笑う。
「ナナも、1体相手取ることは可能なのか?」
伽藍が英斗に尋ねる。
「何言ってるのよ! ナナちゃんにそんな危ない事させる気? あんたが2体引き受けなさいよ」
と高峰がナナを抱きしめて言う。
「一応年上だぞ、俺は……」
伽藍がほんの少しだけ項垂れる。それにしてもクール系キャラを気取っていた割に、ナナの毛に包まれてご満悦である。戦姫の名が泣くレベルであった。
『大丈夫ー!』
一方のナナは余裕の表情である。
「ナナも戦力として数えて貰って問題ない。S級ともソロでやりあえるくらいの強さはある」
「ほう。流石だな。あともう俺達はパーティなんだ、俺のことは伽藍と呼んでくれ。敬語も必要ない」
伽藍は刺身を食べながら言う。
「分かったよ、伽藍」
食事も落ち着いた頃、英斗は切り出した。
「俺達はパーティだ。お互いのスキルについて話し合った方がいいと思うが、どうだろうか?」
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