VS 巨人
英斗の予想は見事に的中した。その広く殺風景な大部屋には巨大な人が胡坐をかいて座っていた。
『巨人 S級
巨人族。その大きさに個体差はあるものの、平均10m程である。力だけでなく、武器を使った技により、敵を葬る』
鑑定結果の言う通り、巨人は全長10mを越えており、兜をつけ、大剣を持っている。その髭の生えた容貌は昔のヴァイキングを彷彿させる。
「オマエハ……センシカ?」
片言の言葉を話す。
「ああ。戦士だ。悪いが、ここは通らせてもらう」
「ナラ……アカシヲシメセ」
そう言うと、巨人は剣を構える。
「ナナ、ここは俺にやらせてくれ。久しぶりのS級だ。これからのためにも体をあっためておきたい」
『はーい』
巨人はその巨大を活かした大きな歩幅で英斗への距離を詰め、その大剣を振るう。英斗は白鬼刀で受け止めるつもりであったが、その振り下ろされた剣の質量を感じ、とっさに回避する。
大剣は地面を大きく砕いた。
「あっぶねえ……。まさしく怪物。あれを受け止めるなんて、傲慢だったな」
伽藍なら止められるのかもな、と思うものの英斗のスキルは身体強化系ではない。巨人はすぐさま英斗の方に体を向けると、踏みつけようと足をあげる。
英斗は巨大な1本の棘を生み出し、降りてくる足に合わせる。踏みつけようとしていた巨人の足に思い切り突き刺さった。
「ググウ!」
だが、巨人の戦士は決してひるまない。棘に貫かれた足をそのまま踏み込み地面につけると、拳を振り下ろす。
英斗は巨人と同じサイズの人型ゴーレムを生み出し、応戦させる。全身魔鉄でできたゴーレムである。
巨人とゴーレムの拳がぶつかり合う。轟音が響き渡り、空間が揺れる。お互い大きなダメージはないようで、巨人は再度大剣を構える。
「超硬合金製の剣だ!」
英斗はゴーレムに大剣を手渡す。巨人とゴーレムの剣が交差する。金属が爆ぜるような音は響き渡る。
激しい攻防であるが、やはりゴーレムの分が悪い。
「一対一ならな。悪いな、俺とゴーレムはセットという事で」
英斗はゴーレムの後ろからゴーレムの頭上まで登ると、手を空中に翳す。
「流星」
その隕石は流星のように巨人に降り注ぎ、右肩を砕いた。そして、完全にバランスをくずした巨人の心臓を、ゴーレムの大剣が貫いた。
「ガハッ!」
巨人は血を吐くとそのまま倒れた。そして、金で出来た巨大な硬貨と、宝箱が落ちる。どうやら死んだようだ。
全身が熱くなり、レベルアップを感じる。
「57か。久しぶりのレベルアップだ。ありがたい」
英斗は硬貨を拾い上げる。そこには500と刻まれていた。
「S級200体と考えると、10万はかなり厳しいな……」
英斗はバッグに入れると、ナナの元へ戻る。
『お疲れさまー。結構強かったねえ』
「ああ。そろそろ、骨がある敵が増えてきた。気を引き締めようか」
『了解ー』
宝箱の中身は、巨大剣であった。
『巨人の大剣 E級
巨人族でも一人前の戦士のみが持つことができる巨大剣。一流の剣士の一撃は大地をも砕く』
使えなさそうなので、無言でバッグに放り込む。いつか使える時がくることを祈りながら。
そして英斗達は26階へ上がる。