砂漠
翌日、英斗達が起きる頃には2人とも旅立った後の様だった。高峰からはお礼の言葉が書かれた紙が書き置かれていた。とても達筆な字で文章の初めには時候の挨拶まで書かれていた。
「よし、俺達も行くか」
『うん!』
外を見ると雪は止んでおり、太陽が顔を出していた。天気も良く、冒険日和といえるだろう。
しばらく探索していると、15階への階段も見つけ上がる。15階も変わらぬ雪景色であった。
「ふう……今日中には16階に行きたいな」
もう雪景色とさよならしたい英斗であった。再び雪景色を駆ける。
『あれじゃない?』
15階にたどり着いて半日、ようやく鉄の扉を見つける。
「頼もう!」
英斗はすぐさま扉を開ける。するとそこには白い雪男が鎮座していた。
『イエティ B級
全身が白い毛で覆われている雪男。その腕力は巨岩をも砕く』
英斗が鑑定をしている最中、ゆっくりと起き上がるイエティ。そして、そのままその足で英斗の元へ走る。
英斗は白鬼刀を抜き、構える。
「ゴアアアッ!」
叫び声と共に、イエティはその巨腕を振るう。英斗は巨腕を躱しつつ、一閃した。次の瞬間イエティの顔が、胴体から離れ地面に落ちる。
同時にダンジョンコインがドロップする。今までと違い500円玉のような素材で出来ており少し立派なコインが落ちる。表面には50と書かれている。
「50DCか。段々増えていくなあ」
英斗はそれをバッグに入れると、次の階への階段を上がる。いつもの柱に手を翳し16階のセーブポイントを登録する。出るか悩んだが、そのまま洞窟で夜を明かした。
翌日、朝食を食べた後、立ち上がる。
「よし、行こうか。トップ層に追いつかなきゃな」
階段付近はどうやら洞窟のようであった。洞窟を出るため歩いていると、今までと違い暑い気がした。
「今まで寒いとこに居たから暑く感じるのかな?」
『私も暑いよ~』
この疑問はすぐに解かれることとなる。
長い洞窟を抜けると砂漠であった。太陽が照っており、砂に足を取られる。
「なるほど、ギャップ萌えだね。あの冷たさから、この暑さ……、並みの男なら落ちちゃうね。物理的に」
見渡す限り、砂漠である。この洞窟以外殆ど何も見えない。見えるのはサボテンくらいである。
『暑いよお……』
ナナはぐったりしている。暑さにはやはり弱いようだ。
「さっさとここを終わらせるか」
少し元気のないナナと共に、砂漠を駆ける。
砂漠の砂をまるで海のように軽やかに泳ぐ魚のような生き物がいる。ヒレだけが砂から見えている。
ヒレは少しずつ英斗の元へやってくる。そして足元までやってくると、その口を開け襲い掛かってきた。
「うおっ! 魚……じゃあねえな。竜って感じでも無いが、やる気なら相手になるぜ」
砂から姿を現したのは、魚と竜を合わせたような珍妙な魔物であった。小型の竜のような見た目ではあるが、背中にヒレがあり、羽の翼というより魚のヒレに近い。
英斗が鑑定する。
『砂竜 B級
竜と名がついているが、厳密には竜種ではなく魚種である。砂に潜られると面倒』
「やっぱ竜ではないな。魚なら、刺身にしてやる!」
英斗は鉄の棘を生み出し砂竜へ襲い掛かる。棘に貫かれた砂竜が悲鳴を上げる。
「ギイイイ!」
勝てない事を悟った砂竜が砂に逃げようとする。
「逃がさん!」
英斗は地面の砂の上に、鉄を生み出す。砂竜付近の砂が全て鉄で覆われる。砂竜はそのまま鉄に頭をぶつけ、悲鳴を上げる。
「ギイイ!」
なぜか砂に潜れない砂竜はパニックに陥る。
「おやすみ」
次の瞬間、英斗が首を斬り落とした。
『これ食べれるのかなぁ?』
「うーん、多分? 魚も竜も美味しいし、いけると思うんだが」
英斗は適当に食べれそうな部位を切り落とすと、袋につめマジックバッグに放り込む。
「ガンガン行くか」
英斗達は砂漠エリアを瞬く間に攻略していく。3日後、20階のエリアボスを討伐し21階までたどり着いた。
「疲れたし、いったん戻るか」
『賛成ー。暑いし一旦外で休みたい』