真心こめて建ててます
2階も全く変わらない景色が広がっていた。
「ダンジョンに常識は通用しないのはまあ分かってるんだけど、この迷路の広さ実際の大きさより広かったような……」
『ダンジョンに常識は通用しないのだー』
2階も多くの人で賑わっている。違いは子供が殆ど居ない事である。
「ここも一気に抜けようか。相手は居ないだろう」
そう言って、再び駆ける。まだダンジョンができたばかりだからか、こんな低階層にいるはずのないような実力者がちらほら居た。
のんびりと迷路を駆けていると、3階への階段を見つけ英斗達は更に上に向かった。
結局4階への階段にたどり着いた頃、夜になってしまった。そこには多くの冒険者たちが火を焚いて温まっている。思い思いに肉を焼いたり、パンを齧っている。
「家建てるか」
英斗はそう呟くと、魔力を手に込め、地面に手をあてる。すると、地面から木でできた小さなログハウスが生み出される。大きさには大きめの小屋という感じだが、1泊の宿には十分なできである。
『おおー、凄ーい!』
ナナも喜んでいる。
「うむ、良いできじゃ」
英斗も家を見て満足気に頷いている。
だが、それを見て驚いているのは他の冒険者たちである。突然小さいとはいえ一軒家が生まれたのである。驚かないわけがない。
「おいおい、俺は夢でも見てんのか!?」
「家が急にできたぞ! スキル『家』とかか?」
「ダンジョンなら引く手あまた過ぎるだろ、そりゃ」
と大きくざわめいた。夕食を食べていた者達も皆手を止めて英斗の家を眺めて呆然としている。
「うーん、やっぱり目立つな……」
と英斗は頭を掻く。だが、スキルで快適な寝床が作れる以上、家で寝たいと言うのが本音である。
ナナがいるため、むりやり絡もうとする者はいなかったが、1人の男が英斗に声をかける。
「凄いな、兄ちゃん。木のスキルかい?」
純粋な好奇心からの質問のようだ。
「秘密です」
と手を口にあてて答える。
「ま、そりゃそうだ。あんまり目立つと危険かもしれんぜ。余計なお世話かもしれないが」
「お気遣いありがとうございます。ですが、大丈夫です。俺、強いですから」
と英斗は飄々と答える。その答えに男は大笑いする。
「なるほど。確かにこりゃ大物だ。強い相棒もいるみたいだから、心配もねえか」
その言葉を聞き、ナナは胸を張る。男はそう言って去っていった。
この日から、ダンジョンに家を建てる男がいる、という噂が流れるようになる。
翌日。
簡易ログハウスを消し去ると、英斗は朝から更に上に進む。4階程度では英斗の相手などいる訳も無く、どんどん進んでいく。4階は随分と人が少ない。低階層に潜っている者達は外に出辛い階を嫌っているのだろう。昼頃には5階への階段を見つけた。
5階層も魔物も弱いため、英斗達はいっきに進む。
『どこら辺から強そうなの出てくるのかな?』
「う~ん、少なくとも25以降なきがするなあ。早くトップ層に追いつくぞ!」
「おー!」
数時間で鉄製の扉を見つける。おそらくボス部屋であろう。
『着いたー』
「流石ナナ! さくっと行こうか」
そう言って、扉を開ける。
中には剣と丸盾を持ったリザードマンが立っていた。英斗を見かけると剣を構え向かってくる。
英斗はそれを一刀に切り伏せる。首の飛んだリザードマンがそのまま地面に倒れ込んだ。
そしてダンジョンコインが地面に落ちる。拾うと10と書かれていた。
「10万遠すぎだろ……」
最高額の商品はリザードマン1万体の死体と交換である。途中で気が狂ってもおかしくない。
一刻も早く、高レートの場所へ向かうべく、先にある階段へ急いだ。