遊馬とエクセリア
「あっ、博士! ただいま帰ってきましたよー!」
と綺麗な銀髪の美少女が手を振っている。全身フルプレートの鎧を纏い、美しい剣を持っていた。瞳は青く、金の睫毛が揺れている。ハーフだろうか。
「彼は新しく来た月城君だ。君達の様にダンジョンタワー踏破を目的としているが、中々強いぞ!」
と博士が英斗を紹介する。
「月城英斗です。ここのトップパーティーということで、色々教えて下さると助かります」
そう言って、英斗は頭を下げる。
「こんにちは、私は山田エクセリアだよー!『雷神』のリーダーです! 何でも聞いてね!」
と笑顔で言う。とても優しそうで、その笑顔とフルプレートメイルとのアンマッチが凄まじい。
「俺は、右京遊馬です。雷神に所属してます。月城さん、よろしく」
「はい!」
「エクセリア君自体が、雷神と呼ばれてるんだよ! 右京君も鉄壁の異名を持つ。ここで最も有名な2人だ」
と博士が教えてくれる。
「月城さん、俺と年近そうですねー、何歳ですか?」
と右京が尋ねる。
「今年で……もう25歳か。いつのまにか年取ってたな」
「タメか! じゃあ俺の事は遊馬って呼んでよ。こんな世界になったら自分の年なんて忘れるよな」
「確かに。遊馬、じゃあ俺の事は英斗って呼んでくれ」
「よろしく、英斗!」
と人懐っこい笑顔で言われる。トップパーティと聞いて身構えたが、とても人の良さそうなパーティであった。
他にも2人雷神に所属しており、4人で『雷神』らしい。2人も同じ席に座り、一緒に食べる。
「じゃあ、英斗は杉並ギルドマスターなのか。中々強そうだと思ったけど、納得だな」
遊馬は肉を食べながら言う。
「私たちは、横浜から来たんですよー。4人とも」
とエクセリアが言う。
「横浜では『雷神』は有名なんだぜ。自分で言うのもなんだけどよ」
遊馬が恥ずかしそうに言う。
「横浜からわざわざ来るのは大変だっただろ」
「エクセリアが、どうしても行きたいっていうからね」
「だって……放置はおすすめしないって言ってたから……。このままだと何か悪い事が起こると思ったのよ」
とエクセリアが気まずそうに言う。
「こんなご時世でも、他人のために動けるのは凄いですね」
英斗は素直にそう言った。話していると、遊馬の元に頼んだコーヒーが置かれる。
「相変わらずコーヒー馬鹿ねえ。昔からそう」
エクセリアが呆れる。コーヒーを飲んで幸せな顔をしている遊馬。
「ここにきて一番うれしかったのは、再びコーヒーが飲めたことだな。豆から挽いたコーヒーも飲みたいなあ」
「2人は昔からの知り合い何ですか?」
英斗が尋ねる。
「ああ。俺とエクセリアは幼馴染でな。家が近所で、昔からよく遊んでたんだ。昔は小さかったのに、すっかり大きくなって……」
「もー! 話それすぎ!」
エクセリアが頬を膨らませる。
「今何階まで潜ったんですか?」
その反応を見て、それとなく博士が尋ねる。
「28階までだなぁ。26階では何組か他にもパーティーを見たし、トップパーティを守らないとな」
「ほうほう。まあトップ層の方は皆S級をソロで倒せる方ばかりですからね。26階を越えていてもおかしくないですが。誰か最初に踏破するのか、楽しみですね」
博士が言う。
「トップ層は皆そんな強いんですね……。23区でもそんな強い人は多くないんですけど」
英斗はトップ層のレベルの高さに驚く。
「そりゃあここは全国から集まってるからな。選りすぐりの精鋭達ってわけだ。長野や、群馬から来た奴等もいる。うちは4人とも、ソロでS級を狩れるしな」
そう言って、にやりと笑う遊馬。
「やるな」
英斗は驚きつつも笑う。
「英斗とも、ダンジョンの上で会うのを楽しみにしてるよ」
そう言って、遊馬は笑った。
「おう! すぐにそこまで行くから待っててくれ」
そう言って、2人は握手を交わした。