話し合い
「では、自己紹介も終わったところで、早速本題に入りたいと思います。既にご存じの事かと思いますが、ダンジョンタワーから、全国各地に魔物が10日周期で放たれています。そして何も手を打たなかった場合、数は増え続ける可能性があります」
司会として、妻夫木が仕切る。
「増えてるのは感じたけど何か手を打てば変わるのですか?」
レミナが笑顔で尋ねる。
「初日から千代田区の者をダンジョンタワーに送っております。ダンジョンタワーは八王子市に出来ていました。そこの者にも聞き込みをしましたが、おそらくダンジョンタワーにいる魔物を狩る事で、周囲に生み出される魔物の数が減る可能性が高いようです」
「では、ダンジョンタワーに潜って魔物を狩れば、外の危機は減らせる訳ね」
レミナは感心しながら言う。
「まだ、調査段階なので、はっきりとはいえませんがおそらく。3回目の襲撃があまり数が増えていなかったのは、タワーに多くの探索者が向かったからと考えられます」
「ダンジョンタワーから魔物が発生するのなら、タワーから生み出されている魔物は、数万ではきかないのでは?そこに近づくのは危険ではないのか?」
とレオが尋ねる。
「ダンジョンタワーを中心として謎の柱が円形に一定間隔で立っているのですが、そこから魔物が発生しています。そして魔物達はなぜか外側に向かっていくので、ダンジョンタワー付近には魔物は居ないのです。逆に周囲の方が安全と言えます」
妻夫木が回答する。この短い間によくぞここまで調べたものだと、英斗も感心する。人を動かす力を感じた。
「じゃあ、皆で魔物を狩った方が安全ってことか? なら話は簡単じゃねえか、皆でダンジョンタワーの魔物を狩り続けたらいい」
大男、伽藍が言う。それに疑問を唱える者が居た。イケメンの乙丸である。
「それも一理あると思いますが。主戦力が皆ダンジョンタワーに行ってしまっては、こちらが危ないです。一定戦力はこちらに残しておくべきでしょう。そもそもタワー内の魔物を狩り続けた場合、どこまで外に湧く魔物が減るのかも現状分かっていません。こちら側に多くの戦力を残しておきたいのが本音です」
乙丸の意見に頷く者も多い。
「なんでぇ、消極的な奴だなあ。まあ別に構わねえぜ。行きたい奴が行けばいい。俺はソロで潜るつもりだからな。今んとこ行くつもりなのは、どれくらいだ?」
伽藍の質問に合わせて、英斗、妻夫木、高峰が手を上げる。
「半分以上は残るのかよ。まあ、俺達が狩ってやるから安心しろ」
伽藍は驚きつつも笑う。
「うちは正直ずっと魔物の襲撃に耐えれる程の余裕は無い。さっさと踏破して終わらせたい、と考えているわ」
高峰は言う。
「私も行かせてもらいます。このままダンジョンタワーを残し続ける方が、危険に感じるので。ここに居るのは皆実力者と考えています。もう少しタワー側に行って欲しいのですが……」
妻夫木が皆を見渡しながら言う。
「俺も行きたいのは山々だが、連日の魔物の群れに区民が怯えていてなあ。今俺が抜けると瓦解しかねんのだ」
とレオが悔しそうに言う。
「こちらの守備も大切だと考えています。今の戦力でタワーに潜り、難しそうなら適宜人数を追加で良いのでは?」
乙丸は随分タワー攻略に消極的である。区民の防御に力を入れたいらしい。
「うちも協力は惜しまない予定だ。隊をいくつも出す。だが、私は戦闘能力が無いため、他の者を向かわせるよ。その方が役に立つだろう」
元自衛隊の長谷川は申し訳なさそうに言う。
「そうですか、無理強いはできませんね……。ギルドマスターの抜けた区はやはり防御力が落ちます。その分他の区から応援を出していただきたいのですがいかがでしょうか?」
妻夫木が言った。要するに、お前らのためにも行ってるのだから少しくらい戦力を分けろ、と言うことである。
「まあ、少しくらいなら……」
乙丸は言う。やくざ者の九頭竜は何一つ言わずに、ただ状況を見ていた。
「では、各区への応援の人数を決めましょうか」
その後は応援の人数の話し合いをして、早期解散となった。皆自分の区が心配であることは言うまでもないだろう。