曲者揃い
正午になると、妻夫木が前に出る。円形の机には妻夫木を抜いた九人の男女が座っている。
「それでは皆様、今から二十三区ギルド会議を始めたいと思います。本日は私を含め、十人のギルドマスターにお集まりいただきました。他のギルドは、既に滅んでいたり、来る余裕がない、交流する気がない等様々な理由で辞退されました。来て頂いた方々に感謝を申し上げます。皆、まずは軽い自己紹介から始めます」
妻夫木は良く通る声で流暢に話している。妻夫木、英斗、レオ、榊、高峰と順に自己紹介をする。
レミナが立ち上がって、優雅に礼をする。
「こんにちは、皆さん。天笠レミナです。今日は素敵な会に呼んでもらえて嬉しいわ。流石に皆強そうでわくわくしちゃう。私は強い男が好きよ。誰よりも強い……そんな男がね」
皆を見ながら微笑むと、そのまま着席した。
そして次の男が立ち上がる。30台前半の真面目そうな男である。
「私は、品川ギルドマスターの小林武彦だ。元々は自衛隊に所属していた。自衛隊が失われた今も、市民を守ろうとする気持ちは変わっていない。今回の会議により、この困難を乗り越えられることを強く願っている」
そうはっきりと言う。英斗は正義感の強そうな人だなあ、とぼんやり聞いていた。隣には刀を持った男が待機している。彼の懐刀といったところであろうか。
続いて立ち上がった男のはモデルのような長身に、綺麗な顔をした二十歳前後の男である。
「僕は、乙丸天です。文京ギルドマスターをしています。小林さんと同じ気持ちで、23区一丸となって、今回の事に当たれたらな、と思っています」
爽やかな笑顔で言った。
「じゃあ、次は俺だな」
そう言ったのは全長190を超えた大男である。肩幅も広く、全身は鋼鉄のような筋肉に覆われていた。短い黒髪を上げていて、口元には髭が蓄えられている。
「俺は、伽藍獅堂だ。なぜか江東ギルドマスターなんかになっちまった。ダンジョンタワーは楽しみにしてる。既にちょっと覗いたんだが、今までのダンジョンより規模が大きい。俺が必ず踏破してやるから、安心してくれ」
と堂々と言い放った。一方、英斗は伽藍の強さを肌で感じていた。
こいつ、相当できるな……。レベルも俺よりかなり高い気がする、と英斗は考える。
この中でもトップクラスの強さを感じた。
そして最後の男が立ち上がる。その男は、スーツを着た30代後半の男である。全身からは暴力の匂いが立ち上っている。明らかに堅気の男ではなかった。顔には大きな切り傷があり、その鋭い眼光は、そこらへんのチンピラなど一睨みで殺せそうなほどである。
「俺の名は、九頭竜洋二だ。別にうちは今回の件で困っちゃいないが、面白そうだから来た。以上だ」
そう言って、席に座り煙草に火をつける。英斗が驚いたのは、九頭竜の後ろに居た男である。そこには中野区で見た狙撃手、小柳がいた。
あいつ……あのヤクザの部下だったのか……、と英斗は驚く。
英斗と目が合うと、小柳は目を逸らす。英斗が既に知っている者も多いが、様々な長が揃ったといえるだろう。