ギルドマスター会議
その夜、杉並ギルドにある者が訪れる。英斗も死体の処理等の対応でギルドに居た。
「杉並ギルドマスターの月城英斗様ですね。千代田ギルドマスター、妻夫木の使者として参りました。ダンジョンタワーが現れて以来どこの区も苦戦を強いられております。今後の事を、各区のギルドマスターで集まって相談したいと考えております。是非月城様にもご参加して頂きたくお願いに参りました」
そう言って、使者を名乗る男が頭を下げる。
「なるほど。確かにこのままではどこも滅びてしまいますからね……。是非参加したい。いつですか?」
英斗は突然の訪問に驚くも、この申し出はありがたかった。こうなっては人類一丸となってダンジョンタワーの攻略に動いた方が良い。
「お互い時間もありません。2日後の正午、千代田区で開催したいと考えております」
「なるほど……。了解しました」
「ありがとうございます。こちらは目的地の地図になります。私はこのまま中野区に向かいます」
「忙しいですね。お疲れ様です」
英斗は使者に生み出したコーラのペットボトルを渡す。お礼代わりである。今時珍しいコーラに驚くも、使者は笑顔で受け取り礼を言うと去っていった。
「遂に、23区の代表が集まるんですねえ。いつかこうなる時がくると思っていましたが」
話の一部始終を聞いていた花田が言った。
「まあどこの区も余裕は無いだろう。全ての区が来るとは思わないが楽しみだ」
英斗が知っているギルドマスターは、榊、レオ、桐喰の三人のみである。
『またお出かけ~?』
ナナが尋ねる。
「そうだよ。最近は忙しくてごめんな」
『いいよー。楽しみー』
英斗はナナに感謝しながら、頭を撫でる。そして次の日早速向かう事にした。
英斗は次の日の昼頃、千代田区を目指して出発する。もはや慣れた遠出である。ヒビ割れて、土が見え隠れするアスファルトの道を進む。
『皆でダンジョン行くのかなぁ?』
ナナが背中の英斗に言う。
「どうだろう。実際、大勢で行けばいいってものでも無いからなあ。ダンジョン攻略してる間に皆死んじゃっては意味が無いからなあ。そこはバランスな気がする」
『そっかー』
ナナの速度は凄まじく、夕方ごろには千代田区に到着した。千代田区は元々官公庁や大企業の本社ビルが数多くあり栄えていた場所であったが、いまやすっかりその姿は失われていた。
「早く着いちゃったけど、まあ遅れるよりいいだろう」
英斗達は適当にねぐらを探して、休む。知らない土地であるため、少し落ち着かなかったがナナがいるため安心して眠りに着いた。
翌日英斗は起きると、目的地に向かった。その途中宍戸と再び出会う。
「お久しぶりです! 英斗さんはやっぱり来たんですねえ」
「宍戸さん、お久しぶりです。流石、新聞記者。今回の会合は見逃せませんか?」
「そりゃあもう。初めてギルドマスターが一堂に会しますからね。今からもうわくわくです」
子供の様に、目を輝かせながら言う。
「昔と違って今はこのギルドマスター達が東京の中心人物です。この会議がどうなるのか、しっかりと書き留めておかねばなりません。私達記者も会議を聞いてても良いみたいなんですよね」
宍戸はすっかり張り切っている。
「区民を安心させたい、ってところですかね」
話ながら歩いていると、指定された場所にたどり着く。今回は、まだ壊れていないビルの一室で行うようだ。
割れた扉から中に入り、階段を上る。そして指定された会議室に入る。どうやら周囲で最も綺麗な場所を探したのか、そこには文明崩壊前と変わらない綺麗な会議室の姿があった。
「働いていた頃を思い出すな……」
英斗は一年前を思い出すが、すでにはるか遠い昔の話のように思えた。
まだ正午までにはだいぶん時間があるため一番乗りであったため、のんびりと椅子に座って待っていた。すると、扉が開く。そこから現れた人は英斗もあった事のある女性だった。