再来
魔物の数は、500程と前回のスタンピードに比べれば少なかった。そして事前に準備をしていたため、皆落ち着きながら戦う事が出来た。
戦い自体は数時間で終わり、すぐに後処理へ動く。被害も殆ど0といえ、きわめて良好な結果といえるだろう。
花田も、集められた魔物の死体を検案しながら言う。
「確かに災害とはいえるでしょうが、小規模で良かったですねえ。私達が強くなったということでしょうか」
「……これくらいで終わりとは思えないんだが……まあしばらくは様子見だな」
英斗はそう言うも、他の者は勝利に酔っているようであった。警戒していた割には期待外れといったところなのかもしれない。
セレナーデが英斗に頼んだ事はおそらくダンジョンタワーの踏破なのだろう。様子を見に行きたくはあったが、落ち着くまでは行けそうになかった。
あれからギルドの者達もぽつぽつとダンジョンタワーへ向かっていった。スキルを与えた者が言う『唯一無二の力と秘宝』は、皆の興味を惹いたのだろう。
杉並ギルドからは、クラン『青犬』が向かった。尾形朋率いる杉並ギルドを代表するクランの一つといえる精鋭達である。
ダンジョンタワーが現れて、10日後再び異変が起こる。再度魔物の群れが杉並区に襲い掛かってきたのだ。その数は千を超えていた。
短期間での再来に皆の顔は曇る。だが、戦わないわけにもいかない。ギルドの者は再び武器を持ち魔物達に立ち向かう。
ダンジョンタワーに向かって人が減っているうえに数も多いため前回よりも犠牲が出てしまった。
死体の山を見ながら英斗は呟く。
「嫌な予感がする……。これから常にこの数の魔物が襲ってくるのなら、そう長くは持たんな」
他のパーティーに入って戦っていた呉羽が英斗の元にやって来る。
「英斗さん、これからも続くんでしょうか?」
心配そうな口調である。周りの者も前回の余裕綽々な態度は鳴りを潜め、静まり返っていた。
「分からないが……。再び来ると考えた方が良いな。アナウンスの言葉を考えると、ダンジョンタワーが踏破されるまで、この状況は続くのかもしれない……」
前回よりも魔物の数が多かったのだ。次回は更に多い可能性がある。倍々に増えていくなら、数か月後には杉並区には屍しか残らないだろう。
「そんな……いったいどうしたら」
呉羽はすっかり意気消沈している。
「世界の秘密どころじゃないな……。なんとかして杉並区を、そして皆を守らないと。だが、そのためにも一刻も速くダンジョンタワーの踏破をしないと……」
セレナーデはこうなる事を見越して、ダンジョンタワーの踏破を依頼したのかもしれない、と英斗は荒れゆく街を見ながら考えていた。
ダンジョンタワーが現れて20日後、再び魔物の群れは姿を現した。数は前回よりも少し多いといったところであった。
「また来たぞー! 皆学校に避難しろ!」
見張りをしていた男の声が響く。
この10日間の間に、英斗達は学校を簡易の要塞化していた。武器も英斗が生み出した物が大量にある。銃や、剣、石、弓矢などあらゆる物を使って、魔物達と戦った。
周期は10日おきと予想していたが、見事に当たったようであらかじめ殆どの者は学校に避難していた。
連日の戦闘に皆顔を曇らせるも、戦わないわけにはいかない。ギルド員だけでなく多くの者が武器を持って戦っていた。
再び魔物達を討伐した後、座りながら英斗は今後のことを考えていた。
「このままずっとここで守っているだけじゃ、ジリ貧だ。なんとかダンジョンタワーの踏破に着手しないと……」