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再会

 英斗達は杉並区へ向かって歩いていた。柚羽以外は皆傷だらけであり、その血の匂いに当てられ多くの魔物が襲ってきた。勿論全てナナと英斗によって永遠の眠りについてしまったが。


「こんな世界になってから、こんなに移動するの初めてだね!」


 柚羽は渋谷区を出られるのが嬉しいのか、声も明るい。


「ああ。今までは長距離移動なんて難しかったからなあ」


 と呉羽が呟く。力なき者にとって長距離移動は命がけと言えた。


「もうすぐ杉並区に着くよ」


 英斗がそう言って見渡すと、杉並区と書かれたプレートのついた電柱が目に入る。すっかり汚れているが、どうやら無事着いたようだ。

 英斗が見知った景色の中を歩いていると、道の先に一人の女性が立っている。どこかで見たような顔だな、と考えていると柚羽が大声を出す。


「お母さん!」


 そう言って、柚羽は走り出す。


「柚羽!」


 母も大声を上げ、柚羽を抱きしめた。


「良かった……本当に無事で良かった……。も、もう二度と会えないかと……」


 そう言った母の目からは、涙が溢れていた。


「心配かけてごめんね……。お兄ちゃんと英斗さんが助けてくれたんだよ」 


 柚羽の瞳も、涙で滲んでいた。2人はしばらく抱き合った後、母は立ち上がり居住まいを正し、英斗の目を見る。


「本当にありがとうございます。貴方は我が家族の命の恩人です。おかげでもう一度家族に会う事が出来ました」


 そう言って、深々と頭を下げる。


「いえいえ、呉羽が頑張ったからですよ」


 その言葉を聞いて、母は呉羽を見る。


「呉羽もよく頑張りましたね。貴方は私の誇りですよ」


 そう言って微笑む。その言葉を聞いて、呉羽は真っ赤になりつつも、笑う。


「僕は……怖くて、でも……英斗さんのお陰で動くことができたよ」


「初めの一歩は誰だって怖い。だが、呉羽は動けた。それが何より大事だ。お母さん、現在はどこにお住いなんですか?」


「英斗さんに助けられたと伝えたら、ギルドの方が空いているアパートを紹介して下さいました。そこに住んでいます」


「なるほど。2人とも、今日は久しぶりの再会だろう。ゆっくり家族水入らずで過ごすといい。これからの事はまた明日話そう」


「「はい! ありがとうございます!」」


 そう言って、九郎丸一家と別れる。杉並区を発ち、まだ2か月も経っていないが懐かしい感じがした。それはきっと英斗が杉並区に愛着を感じてきたからだろう。

 英斗は今まで空けていたギルドに向かった。ギルドの扉を開けると、凛と事務長の花田が話している。こちらに気付くと、凛が零れるような笑顔を向ける。


「帰ってきたんですね!」


 そう言って、こちらに向かってくる。


「ああ、ただいま」


「無事に、用事は済ませられましたか?」


「勿論」


「なら良かったです! ナナちゃんもおかえり!」


『ただいま!』


「おかえりなさいませ、マスター。無事で何よりです。ですが、そうとうな大物だったようで……」


 と花田が言う。花田は英斗がボロボロになっている事から、その過酷さを感じたようだ。


「大物でした。少し、疲れましたね」


「お疲れでしょう。これからの話はまた今度いたしましょう。今日はゆっくり休んでください」


「ありがとうございます。明日紹介したい奴もいるんでまた来ます」


 そう言って、英斗はギルドを出る。正直全身が悲鳴を上げていた。英斗は早々にマンションに戻り、泥の様に眠りに着いた。

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