これが……最後だ
米谷はその全ての隕石を突きと蹴りで粉砕する。
「アハハハハハハ!」
笑いながら、落ちてくる隕石一つ一つに突きを、蹴りを放つ。勿論無傷とは程遠い。だが、全ての隕石が落ちきり、米谷の周りがクレーター以外何も残っていない不毛の地になった後も、米谷自身は堂々と立っていた。
傷だらけで2本の角のうち、1本の先が折れているにも関わらず顎に手をあて不敵に笑っている。
「良い運動になったよ」
そう言って、ポケットから赤ポーションを出し、頭からかける。傷が少しずつ回復していく。
「ふぅ……。あのおっさんタフすぎるな……。リヴィスよりよっぽどタフだぜ。魔力も殆ど使ったってのに」
英斗は未だに倒れない米谷を見て顔を歪めつつ、上級青ポーションを飲めるだけ飲む。英斗の優位性はやはりポーションを生み出し放題なのもあって、他の者より持久戦に強いことだろう。
3本飲み干す事によって、7割ほど魔力が回復した。だが、レオから貰った指輪はまだ使わない。
米谷も動けるくらいには回復したのか。角に魔力を込める。そして次の瞬間、角から黒き光線がビルに放たれる。
その一閃の光線は、ビルを斜めに両断する。そしてビルが重力に負け、崩れ始める。英斗は羽を生やし、落ちていく瓦礫と共に降りていく。
「今のが奥の手かい? この程度じゃあ、鬼神会は沈まんよ」
降りていく英斗に言う。
「これからもっと凄いのお見舞いしてやるから心配するな」
英斗は地上に降り立つと、超硬合金の巨大な腕を生み出し、米谷にその拳を向ける。
「巨人の鉄腕」
米谷も魔力を纏わせた拳を放つ。金属がぶつかり合ったような音が響く。衝撃が辺りを揺らす。だが、そのまま米谷を吹き飛ばすことはできなかった。数秒ぶつかり合った後、巨大腕にヒビが入り、砕け散った。
英斗はすぐさま再び巨大腕を生み出し振るう。だが、同様に米谷の一撃に耐えきれず砕け散った。
「全てを……出し尽くすんだ! 鉄千手!」
英斗は背中からまるで千手観音の如く数百の鉄の手を生み出す。そしてその手全てを米谷に向けて放つ。一つ一つの手が伸び米谷に襲い掛かる。
「神気取りかい? 面白い」
米谷は笑いつつ、真正面からその拳でぶつかる。米谷の拳が振るわれるたびに、鉄の手が破壊される。そのうちの一つの拳が米谷に突き刺さる。小さくうめき声があがり、足が下がるも米谷は気にせず拳を振るい前進する。
米谷の腹部に3発の腕が突き刺さるも、米谷は英斗の目の前まで迫ると、一撃を放つ。間にいくつもの手を挟み威力を減衰させるもその勢いは止まらず、盾ごと英斗を吹き飛ばした。
英斗の盾を持った腕は再びへし折れ、勢いそのまま転がり壁に叩き付けられる。
「ガハッ!」
英斗は口から血を吐く。米谷も隕石をいくつも受け、いくつも鉄の腕が刺さっているにも関わらずまだ悠然としている。タフさが段違いであった。
「効いているはずだ……」
英斗はすぐさま立ち上がると、ビルの中に逃げ込む。
「立つか……。まだ魔力を残してそうだから誘いかもしれないねぇ」
米谷は追わずに周囲を警戒する。だが、しばらくしても英斗は姿を見せない。
「逃げた……のか?」
そう考えていると、英斗が逃げ込んだビルから、3体のランスロットが現れる。
「本人が居ないねぇ。あのうちの一体なのか……それとも」
ランスロットが一斉に襲い掛かる。米谷の注意がランスロットに向かった瞬間地面から棘が生まれ米谷の右足に刺さる。
「グッ! 下か!」
すぐさま米谷が地面に拳を放つ。それにより地面が砕け、地下の空間が現れた。そこには英斗の姿があった。英斗はビルから地下へ降りた後、米谷の下まで穴を生み出していた。
「ナナを傷つけられた借りは必ず返す……そのために来たんだからな!」
ランスロット3体も上から米谷に剣を振るう。米谷は再び両手のナイフを使い、高速で3つの剣を受け止める。
英斗は、白鬼等に魔力を纏わせ黒い斬撃を放つ。
「うざいねぇ……!」
米谷は角から光線を放ち、斬撃にぶつける。轟音と共に、魔力が弾ける。地下空間が大きく揺れる。
英斗は残りの魔力を使い、壁から巨大な鉄の腕を4本生み出し、ランスロットと共に襲わせる。
鉄の両腕に挟まれた米谷をランスロットの剣が襲い掛かる。その両腕の圧力は凄まじく、米谷の腕から鈍い音がする。3本の剣が米谷を突き刺すも、米谷はものともせずに両腕を蹴りで破壊する。そして筋肉を閉め、剣が抜けないように止めた。
剣を引き抜けず動きが止まるランスロット達を魔力を込めた拳で粉砕した。そして、今襲い来る残りの両腕も蹴りで破壊する。おそらく先ほどの一撃で腕にヒビが入り、剣が3本も腹部に刺さっており血だらけにも関わらず英斗を見据える。
「終わりかな?」
米谷はもはや笑っておらず、鋭い眼光で英斗を見つめている。
英斗は、自分の掘り進めた穴から逃げ出す。
「逃がさん!」
米谷も凄まじい速度で英斗を追いかける。大きな空間を抜け、英斗の掘った道に差し掛かった時、英斗が突如振り向く。
米谷は英斗が死の覚悟を決めたのか、と考えたがそうではなかった。突如魔力切れだった英斗の体に魔力が漲る。レオから貰ったホルミスの指輪の効果で魔力が一度限りではあるが全快する。
「これが……最後だ」
英斗がそう言うと、英斗の全快していた魔力が、一瞬で全て失われる。それと同時に、超巨大砲台が現れる。その長さは全長10mを優に超えていた。米谷はこれが英斗の本当の奥の手だと察した。魔力を一度、空にすることで誘い込まれたのだと。
「超電磁砲」
米谷が回避しようと動いた瞬間、まるで光のような速さで砲弾が放たれ米谷の腹部を貫いた。
今日は6章の終わりまで、投稿します。