流星賛歌
英斗は、あらゆる手を使って、米谷に攻撃を行う。通常の鉄の棘を地面から生み出しつつ、超硬合金製の棘を紛れさせる。
鉄の棘を軽くいなしつつも、超硬合金の棘をその黒い拳で粉砕する。すぐに英斗は炎槍を大量に放ちつつ、地面を凍らせる。
だが、米谷は背中から翼を生やし、空を飛びつつ襲ってくる。
「飛べるのかよ!」
英斗はそう言うと、地面から超硬合金製の鎖を生み出し捕らえようとする。米谷は魔力を込めたナイフで鎖を斬り裂きつつも向かってくる。
これは止められない、そう感じた英斗は超硬合金製の壁を三重で生み出した後、盾を構える。
米谷は足に黒く禍々しい魔力を纏わせると、跳び蹴りを放つ。
その一撃は、超硬合金製の壁を段ボールのように易々とぶち抜くと、盾ごと英斗を吹き飛ばした。英斗は車輪のように回転しながら、ビルに叩き付けられる。
意識を飛ばした英斗が目を覚ますと、既に米谷が迫っていた。
「あんたがそれくらいやるのは……最初から分かってたさ」
英斗はそう呟くと、白鬼刀を握る。英斗はさっきの一撃で盾を持つ左腕が既に折れていた。
「だが……そんなあんたに勝つために俺は、地獄で修業してきたんだよ! 我が騎士!」
英斗は左右に2体の動く甲冑を生み出す。体からは魔力が発されており、大きさは成人男性程である。マントを纏い、片手には剣を握っている。
自動人形との大きな違いは、戦闘に特化されている点である。
英斗はランスロットと共に、米谷に襲い掛かる。米谷は、英斗が2体の甲冑を引き連れていることに驚くも、もう1丁黒いナイフを取り出した。
ランスロット2体の剣が米谷を襲う。米谷は2本のナイフを巧みに使い、ランスロットの剣を受け止める。だが、同時に英斗が襲い掛かる。米谷はランスロット1体に蹴りを放ち距離を取りすぐさま英斗の一撃を受け止めた。
激しい剣戟が鳴り響く。ランスロットは英斗の生み出せるものの中でもイグニールの次に戦闘力が高い。その2体と英斗の同時攻撃を防ぐあたりに米谷の戦闘力が垣間見える。
英斗は右腕のみで剣を振るっていた。回復する暇がなかったのである。
「そっちの腕、動かないんじゃないかい?」
英斗の白鬼刀の一撃を受け止めつつ、米谷が笑いながら言う。
「かすり傷だよ」
英斗も笑いながら、もう一撃浴びせる。その一撃も止められると、米谷は再び1体のランスロットを蹴り飛ばす。米谷の両手は英斗ともう一体のランスロットの剣により塞がっている。
だが、米谷は角に魔力を溜め光線を英斗の右太ももに放つ。
「グアアア!」
光線は英斗の太ももを貫いた。英斗が痛みでバランスを崩す。その隙を見逃すほど米谷は甘くない。
「この俺相手に接近戦を挑んだのは、早計だったねぇ」
米谷がナイフで英斗の背中を狙う。先ほど吹き飛ばされたランスロットが、英斗を突き飛ばしナイフが空を切る。あと少し遅れていれば英斗の命は無かっただろう。
危ねえ……、英斗は命の危機を感じ背中に汗をかく。
「残念……」
米谷はそう言って、自分と戦っていたランスロットの胸元にナイフを突き刺す。やはり1体だけでは大した時間稼ぎにはならないようだ。
「まだ……これからだ」
英斗はそう言うと煙幕を生み出す。辺り一面が濃い煙で埋め尽くされる。英斗はランスロット2体を米谷に向かわせる。痛む腕とふとももに上級赤ポーションをかけると、翼を生やし先ほど叩き付けられたビルの屋上へ向かう。
ランスロット達が米谷相手に剣を振るっている。だが、2体では米谷は止めきれなかった。米谷はナイフで剣を受け流すと、魔力を纏わせた拳をランスロットの腹部に撃ち込む。たった一撃でランスロットの胸当部分が消し飛んだ。1体になったランスロットは、米谷のナイフに一方的に切り刻まれた。
その頃英斗は屋上に辿り着いていた。
「すまないな、ランスロット」
英斗はビルの屋上に魔力による巨大な輪を生み出していた。その大きさ半径20mを超える。そして、英斗は大量の魔力を一気に使用する。
「流星賛歌」
次の瞬間、ビルの屋上の輪から、大量の隕石が地面の米谷目掛けて降り注ぐ。その様子は壮観の一言に尽きた。おおよそ人の力によって生み出されたものとは思えない迫力であった。
大量に降り注ぐ隕石をみながら、米谷は笑う。
「はは。どこまでも楽しませてくれるねぇ」
米谷は魔力を全身に纏わせる。いままでより更に筋力を膨張させ、拳と足先により魔力を纏わせる。真っ向から打ち合うつもりである。
次の瞬間、何十もの隕石が米谷に被弾した。