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悪の夢

 アジトに戻ってしばらく休んでいると、呉羽が戻ってきた。腕には怪我をしているようだ。


「お疲れ。怪我どうしたんだ!?」


 英斗が驚いて尋ねると、呉羽は首を左右に振る。


「柚羽の場所を調べようと、鬼神会のアジトまで行ったんですが……やっぱり人質の場所は上しか知らないようで。聞きまわっていたら、ばれて襲われました。ですが、英斗さんが闘技場を爆破してくれたおかげで、興行の話はまだ出ていないようです」


 そう恥ずかしそうに言う。よっぽど心配なのだろう。普段は臆病な呉羽にしては無理をしたようだ。


「時間稼ぎにはなったようだな。このまま鬼神会の者を狩り続ける。奴が出てくるまでな」


「鬼神会の者達から、凄く恐れられてましたよ英斗さん。逃げても鬼神会から追われるし、このまま居ても英斗さんから襲われますしね。士気も落ちてるみたいです」


「そのためのゲリラ戦法よ。下の士気が下がれば上も動かざるをえないだろうだろう」


 英斗はそう言って、寝転がる。米谷を前線に引っ張り出すまでは襲い続けるつもりである。






 鬼神会のアジトでは、綺麗なソファに座りながら桐喰が部下からの報告を受けていた。桐喰の苛つきを肌で感じている部下は報告を終えるとすぐさま部屋を出る。


「あのガキが……!」


 桐喰は両手を合わせ、怒りに身を任せ強く握りしめ、爪が手の甲にまで食い込んでいた。


「また悪い報告か?」


 米谷は酒を飲みながら、笑って聞く。


「ああ。和久(わく)のパーティーが5人ともやられたらしい。あいつらは、俺とお前の次に強い。おまけに春海の奴も当分動けそうにない」


「あそこは、パーティーならS級も倒せるくらい強いんだけどねぇ。やっぱりダンジョンで強くなっちゃったかぁ」


 と笑っている。


「ヨネ……呑気に笑ってる場合か?」


 と不快そうに言う。


「なに。俺達がいれば、いくら雑魚がやられても鬼神会は揺るがない。そうだろ?」


 と余裕たっぷりに言う。その余裕さに当てられたのか、桐喰も笑う。


「確かにそうだ。俺とお前が居れば、うちは何の問題もない。少しずつだが、俺達の夢に近づいてきてるんだ。あんな馬鹿に邪魔などさせない……」


「ふふ。いい年して、俺達が世界征服なんて考えてるなんて部下は誰も思ってないだろうねぇ」


 そう言って、米谷は煙草に火をつけ少年のような笑みを浮かべる。


「今までなら、そんなこと言っても馬鹿の妄言と吐き捨てられて終わるだろうな。だが、こんな世界なら……スキルで、武力で、頂点を取る事も可能なはずだ」


「そんな夢見がちなお前だから、俺はお前に命を任せてるんだ。悪党として……正義の味方を殺ってしまおうかねぇ」


「そうだな……悪党として、正義の味方気取りを殺しに行こうか」


 苛立ちはすっかり治まったらしい桐喰は落ち着いて今後の対応について考え、部下に指示を出す。戦いはまだ終わらない。








 次の日、鬼神会は再び税金を納めていない者達を捕まえ始めた。そして、渋谷区民に奴隷を逃がした男のせいで、足りなくなったためだと説明して回る。


「俺はまだ1か月しか滞納してないはずだ。3か月からって言ってたじゃないか!?」


「うるさい! 最近暴れてる銀狼使いを恨むんだな」


 多くの者が連行されていく。そしてそれを英斗のせいだと喧伝しているのだ。鬼神会の者達は紙を町中に貼ってまで、英斗のせいだと広めていた。


「これは……世論操作ですかね」


「そうだな」


 呉羽と英斗は全く違う姿に幻影で化け、町の様子を覗いていた。ナナはお留守番である。だが、効果はあるようで、区民のヘイトは英斗に少しずつ向いているようだ。人とは実際危害を加える強者より、分かりやすく叩きやすい者を叩くようである。


「まあ、やる事は変わらないよ。今まで通りやるだけだ」


 と英斗は言う。

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― 新着の感想 ―
[一言] スキル頼りの恐怖政治なんてすぐに破綻する間抜けの方策だよね。 自分より強いやつが来たら一瞬で終わりだし。
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