豊富
アジトに戻ると、呉羽がやってくる。
「闘技場は……?」
「埋めてきた。がどこまで時間稼ぎになるかは分からん。これからは本格的に敵の数を減らしに行く。呉羽はスキルを使って情報集めを頼むよ」
「分かりました」
姿を自由に別人に見せられるのならば、情報は集めやすいだろうという判断である。この日から本格的に敵の数を減らす事になる。
英斗はナナに乗りながら少数で動いている鬼神会を襲っては逃げる、という行為を繰り返していた。
「出たぞー!」
とナナに乗り向かってくる英斗を見つけた鬼神会のメンバーが叫ぶ。だが、次の瞬間英斗の白鬼刀が腹部を斬り裂く。ナナは氷柱を地面から生み出し、足を貫いた。
「あああ!」
鬼神会の者達が地面に倒れ込む。
「俺達はこれからもお前達を狙う。襲われたくなければ、抜けるんだな!」
そう告げて、去っていった。斬られた者達は痛みで顔を歪めつつ、辻斬りのように斬られる恐怖に怯えることとなる。
米谷との邂逅から3日、100人ほど鬼神会の者を斬ったところで、5人組程のグループで動くことが一切なくなったのだ。
「う~ん、対策かな? 30人以上でしか動かなくなってる。だが、その程度の対策じゃ無意味なんだよな」
相手も少数では勝てない事を理解したのか、30人で動いている。だが、その程度の人数差では話にならない。
英斗は鉄球を生み出すと、そこから無数の鉄の棘を生み出す。棘は上から雨の様に降り注いだ。
「ぎゃああ!」
手足や腹部を貫かれた者が大声で地面に転がる。だが、流石は鬼神会と言えるのか、何人かは攻撃を躱し、こちらに向かってきた。
「殺す」
1人が、弓を生み出すと矢を放つ。魔力を纏った矢は、高速で英斗を襲う。英斗は盾で受け止めると、すぐ傍までいかつい男が迫ってきていた。
「ぬん!」
男が渾身のフックをするも、英斗はしゃがんで躱すと、雷撃を加える。電気が弾ける音と共に、動きが一瞬止まる。
その隙に英斗は渾身の蹴りを顎に放つ。
「ぐえっ!」
そして、腹部に炎槍を撃ち込む。
「悪いな」
焼けるような音と共に、男の叫び声が響く。
「ぐあああああ!」
「このっ、化物め!」
先ほど矢を射た男は、7つの矢を連射する。英斗は、再度盾で受け止めると、銃を生み出し腹部を撃つ。
「っぐう!」
まだ、残っている1人に目を向けると、男は地面に手を付いて魔力を練り込んでいる。
「何を……」
次の瞬間、英斗の地面のアスファルトが、砂に変わる。
「砂使いかっ!?」
そして、巨大な砂で出来た両手が英斗に襲い掛かる。
「これは厄介だな」
英斗は体を鉄の球体で包み、身を守る。砂の手はお構いなしに、鉄球を握りつぶそうとする。
「死ねっ……!」
だが、次の瞬間鉄球から巨大な鉄の棘が出て手を貫いた。そして、鉄球は棘を大量に生み出しウニの様になる。
「くそっ! 一体何のスキルなんだ、お前は!」
男は、そこらじゅうを全て砂に変え、砂の波を生み出す。そのまま英斗を地下深くまで埋めるつもりであった。
英斗は、鉄を解除し姿を現す。
「良いスキルだな」
英斗はそう言うと、巨大な爆弾を生み出すと、襲い来る砂の波にぶつける。爆発音と共に砂が吹き飛ぶ。砂の波に穴が開き、男の姿が見えた英斗は白鬼刀に魔力を纏わせ黒き斬撃を放つ。
その斬撃は男の体を稲妻のように貫いた。そのまま地面に倒れ込む。
「これほどの男が、ただの手下とは……中々人材豊富なこって」
『すこしつよかったねえ』
と英斗は言うと、ナナに乗りすぐさまこの場を去る。だが、それを逃がすほど相手も甘くなかった。数分走ったところで、再び5人組に道を塞がれる。前回囲まれたときに居た精鋭の5人組である。