拉致
「ここか……」
そのまま3人を担ぎ地面に飛び降りる。突如3人を担いだ曽根崎が降りてきたため、地上の見張りは驚きを隠せなかった。
「そ、曽根崎さん、何を……」
英斗は木の根を地面から生み出し見張りを拘束すると、一目散に逃げだしナナ達と合流する。
「本当に3人とも捕まえてきたんですか……」
と呉羽は驚きを隠せない。
「逃げるぞ!」
3人を担いで、英斗達はアジトに戻った。英斗はアジトとしているビルの1室に3人を放り投げると、扉にカギを付ける。そして、3人の首に装置をかける。
「既に知ってると思うが、俺は鬼神会と今やり合っている者だ。悪いが、お前達を抗争終了までここで監禁させてもらう。騒ぐのもここを逃げようとするのもおすすめしない。俺は爆弾を生み出せるが、その首輪は爆弾だ。この部屋から出ると爆発するように設定してある」
英斗はそう言って、小型ダイナマイトを目の前で生み出し爆破させる。その様子を見て3人は怯えていた。英斗は、3人の顔に貼りついたガムを取る。
「お前、何てことを! 俺にこんな非人道的なことしてただで済むと思っているのか!」
とそのうちの1人が大声で叫ぶ。英斗は無言で剣を生み出し、足に突き刺す。
「グアア!」
男は悲鳴を上げる。
「無傷で拘束したから、甘いと思われるのは心外だな。俺は状況によっては殺す覚悟はできている。それに、税金などというカツアゲをして、払えない者を化物と殺し合いをさせるお前達に倫理観を問われる筋合いはない」
と冷たい声で言う。
「……それは俺達では無く、上がしている事だ」
あっさりと上に責任転嫁した。
「それが通じる程、世の中甘くは無いだろう? 心配しなくても、ここで大人しくしていたら殺しはしない。別に誰彼殺したい訳では無いからな」
「本当ですか!? じゃあこの手枷と足枷取ってくださいよ! トイレもできないじゃないですか」
と女が言う。
「う~ん……トイレか、考えてなかったな。男女一緒は問題か。あんたは別の部屋に行ってもらうか。スキルは、どっちだ?」
「私も治癒師 よ。そんな無理やり壁壊して逃げるくらいの強さはないわ」
と女が言う。
「疑わしいが、まあいいか。皆の足枷は取ってやる。手枷は、少し長めの手錠はつけさせてもらうがな」
そう言って、皆の足枷を外す。足を刺された男は、睨みつけているものの襲い掛かったりはしないようだ。その後、部屋には窓があったのだがその窓を全て鉄で埋め、鍵をかける。
「あんたはこっちだ」
英斗は女治癒師をつれて、別の部屋に移動する。
「貴方、本当にうちに勝つつもりなの? 仲間何人居るか知らないけど、速く諦めて逃げた方が身のためよ?」
女は馬鹿を見るような目で英斗を見る。
「なんだ、心配してくれてるのか? 気持ちだけ受け取っておくよ」
「自分のためよ! あんたが私たちの事言わずに死んで、餓死したらどうすんのよ!」
「じゃあ、俺が勝つことを祈っておくんだな」
「だいたい、今時敵を殺さずに勝とうってのが、無理な話なのよ」
「殺さずに勝つ……っていうのが高難易度なのは知ってるさ。だが、それができたら、普通に勝つより遥かに凄いってことだろ?」
と英斗が言う。女は呆れたような顔をしている。
「……ちゃんとご飯出してよね、三食」
「1日分一度に渡すから、考えて食べろよ」
英斗は女を別室に閉じ込め、窓を同じように埋め鍵をかける。一仕事終えた英斗は、ストレッチをした後、次の作業のため動き始める。
英斗は再び呉羽に、曽根崎の姿に変えてもらい、地下の闘技場へ向かった。
「曽根崎さん、お疲れ様です」
見張りの下っ端からの挨拶に、軽い会釈を返し階段を下りる。そのまま少し歩き、地下闘技場の扉を開ける。前と変わらない、闘技場がそこにあった。
英斗は大量のダイナマイトを生み出し、闘技場中に置く。そして最後に時限式のダイナマイトを置き、地下を去った。
英斗が地下を出てすぐ地下から爆音が鳴り響く。その衝撃で1階の床に穴が開き、瓦礫が地下に降り注いでいるようだ。
「何があったんだ! 今すぐ地下へ向かえ!」
とあわただしく鬼神会の者が動き始める。
「これで、少しは興行が遅れさせる事ができるはずだ。 それまでに……」
英斗は柚羽がキメラと戦わされる前に、闘技場を埋めたのだ。そして復旧中に片を付ける。だが、それが難しい事は英斗自身が一番よく分かっていた。