英斗さん、やたら侵入しがち問題
英斗は5人が、皆の視線から外れる場所に移動した瞬間、襲い掛かる。赤い粘着質のガムのようなようなものを生み出し、4人の顔に放つ。ガムは4人の口と目を奪い、にわかにパニックになる。そして、白鬼刀と足と腹部を斬り裂く。
一瞬で仲間をやられた男は、叫ぼうとするも、英斗の手刀が首に刺さる。
「ゲェ!」
バランスを崩した男の首元に、刀をあてる。
「叫ぶと殺す。分かったか?」
男は首を必死で縦に振る。
「鬼神会には、ヒーラーや、薬師、錬金術師など回復できるスキル持ちは何人いる?」
「さ……3人……だ」
と喉を傷めたのであろうしゃがれた声で男は返事をする。
「嘘は、ためにならんぞ? 他のメンバーにも聞いてあり、既に情報はある程度集めてある」
勿論ハッタリである。
「聞い……ていたなら……わ……かるだろ。ヒーラーが……2人。薬師1人……だ」
「どこにいる?」
「渋谷ギルドの……本部に3人ともいるはずだ。3階に治療室があるんだ、そこに」
「やっぱりあそこか」
「まだ捕まっている女の子が居るはずですが、何か知りませんか?」
呉羽が男に尋ねる。
「いや……知らねえな。あんたが全員逃がしたんじゃないのか?」
と英斗を見ながら言う。
「本当か?」
「本当だ、知らん! 俺みたいな……下っ端がそこまで知るわけない……だろう」
「そうか、分かったよ」
そう言って、蹴りを放ち倒した後手足を鉄で創った手枷、足枷で縛る。
「行こうか」
『はーい』
「はい」
英斗達は、鬼神会の本部に向かう。当たり前ではあるが、警備はとても厳重であった。建物自体は、文明崩壊前からある4階建ての建物である。
「正面突破は……やめておこうか。呉羽、俺をあの蛇男の幻影に変えてくれないか?」
「えっ? 別にできますけど、声どうするんですか?」
「喉痛めたことにすればいい。喉に包帯を巻いている蛇男、できるか?」
「できますけど……そう上手くいくでしょうか?」
呉羽はそう言うと、英斗を、喉に包帯を巻いている蛇男の姿に変える。ちなみに、獣人化はしておらず、普通の人間と変わらない姿である。英斗は、鏡を生み出し、自分の姿を確認する。
「よし、これならばれることは無いだろう。ばれたら正面突破するし、問題ない。ナナと呉羽はここで待っててくれ」
英斗は近くのビルの屋上まで上がると、渋谷本部の屋上に飛び移る。そしてカギを生み出し屋上の扉を開け、中に入る。
出来る限り、人目に付かない様に3階への階段を探す。3階に降りると、鬼神会のメンバー達と鉢合わせをする。
「あれ、曽根崎さん。あの男を探しに行ったんじゃ?」
英斗は一瞬驚きつつも、自らの首元を指さす。
「あの男に喉やられたんですか!?」
メンバー達は、喉をやられたと判断したようだが、英斗はその判断にのり頭を縦に振る。
「なるほど。大変ですね~。早く治した方が良いですよ」
英斗は頭を再度振ると、この場を去る。道を左に曲がろうとすると、再度声がかかる。
「あれ、医務室そっちじゃないですよ?」
英斗は動揺を隠し振り向き、頭を掻くと逆方向に向かう。どうやらこちらが正解だったようで、今度は声はかからなかった。
「なんか少し変じゃなかった? いつもはもっと偉そうなのになあ」
「立て続けの失敗で、余裕無くなってるんじゃねえ?」
英斗を曽根崎だと思っていた男達は、違和感を感じつつもそのまま去っていた。
英斗は彼等が去っていった後、周囲を見渡し大きく息を吐いた。
「危ねえ……。早く見つけよ」
そう言って、医務室を探す。少し歩くと医務室を見つける。中に入ると、3人の男女が座っていた。
「曽根崎さん、どうかされましたか?」
治癒師と思わしき男が、英斗に声をかける。英斗は無言で、ガムを再度生み出し、3人の顔に放つ。
「なっ……ムグッ!」
身内と思って、油断していたのか見事に命中すると、すぐさま鉄製の手枷、足枷で3人とも縛る。息ができるように、鼻部分だけガムを取り除く。
「悪いな。抗争が終わるまであんた達を拘束させてもらう」
3人とも何か呻いているが、皆担ぎ上げると窓を開ける。