再会
ナナに乗ると、出会う鬼神会のメンバーを攻撃しながら地下闘技場へ向かう。
「お前が侵入者……グアッ!」
見張りをナナの突進で吹き飛ばし、一気に階段を下る。
「いいぞー、ナナ」
『えっへん』
階段を下り終えると、呉羽の言っていた扉を探す。それはすぐ見つかった。英斗は再び鉄の腕でぶち破ると、更に奥へと進む。呉羽が捕まっていたのだろう場所はすぐ見つかった、本当に石の檻だったからだ。普通現代の地下にこのような物は無い。おそらく鬼神会が作ったのだろう。
「だが、石なら余裕だな」
そう言って、石の檻を刀で一閃する。
「だ、誰だお前! 興行は明日のはずだろ!」
英斗を鬼神会のメンバーだと思っている男が大声で叫ぶ。男は全員で1部屋らしい。10人以上が1部屋に閉じ込められていた。他の者も怯えている。
「驚かせましたか、すみません。助けに参りました。逃げましょう。ここに居ては死ぬだけです」
と英斗は穏やかに声をかける。
「助けに……そんなの無理に決まってらあ。鬼神会に追われて、生きていける訳がねえ」
ともう1人の髭面の男が言う。もう絶望しているのか、声に生気も無い。
「そうだ、あいつらに逆らっちゃ生きていけやしねえ」
と他の者も言い始める。
「では、あなた方はここに残られるという事でいいですね。時間の余裕は無いので、逃げたい者だけついてきてください。渋谷区を出ます。その後は好きな所に逃げてください。1週間分の食料もお渡しします。行く場所がなければ、杉並区へ行ってください」
英斗の素っ気ない言葉に面食らう髭面の男。
「捕まっている女性陣は全員かは分かりませんが、既に助けました。あるご婦人が旦那さんを心配しておりましたよ」
「それは俺の女房だ! そっかまだ生きてたのか……愛子」
と男が涙ぐむ。
「俺は逃げるぜ! どうせ化物と殺し合いさせられて、死ぬよりこのチャンスに賭けたい!」
と男が涙を拭き、立ち上がる。それを見て多くの男達も立ち上がる。
「では、逃げる方は行きましょう……」
『えいと、てきのあしおとする』
「まあ、来るよねえ。道は俺が作ります。そこから逃げてください。後の案内はこいつに」
そう言って、1体の自動人形を生み出す。その後手を地面につけ、巨大な樹木を生み出す。その樹木は天井を突き破り、地上の光を英斗達に降り注いだ。
「す、すげえ!」
「こいつなら……鬼神会を!」
と男達が興奮している。英斗はすぐさま土で地上へと階段を生み出す。
「皆さん、ここから逃げますよ! 俺が敵を惹き付けるので、早く!」
英斗はロケットランチャーを生み出すと、今来た地下の道に撃ち込む。爆音と共に、道が塞がれる。
「これでよし」
英斗は、先陣を切り階段を駆け上がる。地上には、30人を超える鬼神会のメンバー達が待ち構えていた。
「お前か……俺達に逆らった馬鹿は。この人数で勝てると思っとるんか!」
「逆に聞くけど、この程度の人数で勝てると思ったのか?」
英斗は煽るように言うとバリアを生み出し、敵の攻撃を防ぎつつ、30を超える炎槍を生み出し放つ。多くの敵に刺さり、叫び声があがる。
「アアアア!」
残った者達には、ガトリング砲の銃弾の雨をお見舞いする。ガトリング砲の轟音が響き渡る。
「死んでないといいけど、まあこの人数差じゃ手加減は難しい……死にたくない奴は隠れてな!」
英斗が暴れている間に、救出した男達は無事、ここから離れたようである。英斗が一安心していると、突然悪寒が走る。
その瞬間英斗は本能で感じ取った。英斗を破りナナを殺そうとしたあの男、米谷賢が近くにいると。
英斗の警戒をよそに、散歩道を歩くかのように悠然とあの男は現れた。倒れている部下を見て特に表情も変えずに呑気に言う。
「こりゃ~随分と暴れたねぇ。お兄ちゃん」
とへらへらと笑う。
「ああ。中々会えなかったから暴れちまったよ」
英斗も笑いながら言う。前と同じく少し震えているが、今度の震えは武者震いであった。