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乱入は戦の華

 巨大な熊がケロベロスもどきに襲い掛かり、回避させた。熊はすぐさま追撃を加え確かに当たった、はずだった。

 なんと、熊の腕はケロベロスもどきに触れること無く、ただ通り抜けていた。


「出ました! 九郎丸選手の幻術です! 全く攻撃力も無く、ハッタリにしかなりません!」


 その実況を聞き、観客も皆再び笑い声をあげる。


「なるほど……」


 彼のスキルは幻術を生み出すスキルなのだろう。確かに便利そうなスキルだが、この状態では中々勝つことは難しそうである。


「だ、誰か助けてくれよぉ! し、死にたくない!」


 と九郎丸は塀を叩きながら、泣きそうな顔で懇願する。それを見て、笑い声と怒声が同時に響き渡る。


「ナナ、すまないな。あいつを助けるぞ」


『ふふ、しってたよ』


 とナナは答える。絶対にそうするだろう、と思っていたのだろう。

 英斗は室内から出ると普通より高性能な自動人形(オートマータ)を生み出す。通常よりも戦闘力も、必要魔力も高めである。フードを深く被り、顔も見れないようにしている。


「これなら、ばれはしないはずだ……。こいつが負けたら……直接行くしかないな」


『はーい』


 自動人形と時間差で中に入ると、自動人形を突っ込ませる。


「もう駄目だぁ」


 と九郎丸は怪我をした左腕を押さえながら逃げまどう。周囲に自分と同じ幻影を浮かべて。

 自動人形は、左手のドリルを回転させて、バリアを突き刺した。ドリルの回転音が響き渡る。


「おっとここで侵入者の乱入だァーーーーー! 彼の友人だろうか、颯爽と現れました!」


 と実況者は焦りを微塵も感じさせない声で叫ぶ。

 それを見ていた、VIP席の太った男も叫ぶ。


「その馬鹿を止めろーー!」


 だが、ドリルにより少しずつバリアにひびが入っていく。そして、自動人形はそのままひびの部分に蹴りを放ち叩き割った。

 ガラスが割れたような音と共に、バリアの破片が、綺麗に舞い散る。本当に助けてくれる者が居るとは思っていなかった九郎丸も呆気に取られて見守っていた。

 周りを守っていた、鬼神会の警備員達も動き始める。だが、それよりも早く自動人形が九郎丸を抱きかかえ、出口に向かう。


「逃がすかあ!」


 VIP席の太った男の顔が変貌する。巨大な蛇のような顔になったと思ったら、その首を伸ばして自動人形の腹部に食らいついた。その牙により、その体から機械の破壊音が響く。

 だが、自動人形は歯牙にもかけず、そのまま扉を開け、逃亡していった。蛇男は驚きを隠しもせずに、周りの警備員に大声を上げる。


「今すぐ追わんか、貴様ら!」


「「は、はい!」」


 その声を聞き、すぐさま多くの警備員が後を追って室内から去っていった。


「わしの牙には猛毒があるというのに、あやつ気にも留めず去っていきおったわ」


 と邪悪な顔をして蛇男が言う。自動人形は機械であり、毒は大して効かないのだがそんなことを知る由もない。蛇男はすぐさま姿を戻し、観客達に頭を下げる。


「これは、これは見苦しいものをお見せし、大変失礼いたしました。奴は捕らえ次第、処刑しますのでご安心を。すぐに再開しますので、しばらくお待ちください」


 そう言って、蛇男は扉を開け去っていった。観客達のざわめきはしばらく収まりそうもなかった。


「おいおい、これ賭けどうなるんだよ」


「この区で鬼神会に喧嘩売る奴がいるなんてな」


 興が削がれたのか、席を立つ者達も出てきた。英斗達はその者達に混じりながら、闘技場を去り、自動人形の下へ急いだ。

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