エピローグ
英斗は山田と梓に別れを告げていた。
「山田さん、結局あまり話せませんでしたがまた会いましょう。梓も、元気でな」
「今度来るときには、もっと落ち着いて話せると思います。また来てくださいね」
と山田が言う。
「先生、また来てね。私も旅できるようになったら、先生の居る杉並区に行くから!」
「いつでも来るといい。待ってるよ」
『ばいばい!』
とナナも念話を送る。英斗達は手を振りながらも、台東区を後にするため旅立つ。歩き始めてすぐ、後ろから英斗達を追う声がする。
「月城さん、待ってくれ!」
その声の主はレオである。
「どうかされましたか?」
「いや、あれだけ迷惑をかけたからな。せめてお詫びの品を」
と言って、レオが取り出したのは、青い宝石の付いた指輪である。
「これは昔潜ったダンジョンで手に入れたアイテムだ。中々の品だ、君に持っていてほしい」
英斗が鑑定する。
『ホルミスの指輪 E級
魔力を貯蔵できる指輪。指輪を付けることで、自由に指輪と持ち主間で魔力の移動が可能』
英斗は能力を見て、驚いた。貯蔵量は不明であるが、長期戦では青ポーションだけだと、魔力切れになることも多い。Eであることを考えると、貯蔵量も多そうである。
「これは……シンプルでいい品ですね」
「そうだろう。是非使ってくれ。後……君の捜し人について考えていたんだが、渋谷ギルドのNo.1かもしれない。昔ダンジョンであったことがある」
もしかしたらだが、と付け加えたうえでレオが言う。宍戸からも渋谷ギルドの男については聞いている。
「情報ありがとうございます。一度、渋谷に行ってみます」
と頭を下げる。
「良い旅を……」
そう言って、英斗達とレオは別れた。
しばらく歩いた後、ナナが言う。
『ねえねええいと。れおさんとのたたかいのときあれつかったの?』
「……いや、あれは使ってない。あれはちょっと威力が強すぎる。それに一発しか使えないしなあ」
『そっか。あれかっこよくてわたしすきー』
「切り札だからな」
『なるほどー。ずいぶん、ながくいたね』
「旅ってものは、寄り道はメインなのさ。杉並ギルドは俺達が居なくても大丈夫さ。ゆっくり行こう」
『うん。あずさともまたあいたいね!』
「そうだな。また会えるよ。最近思うんだ。人類ってのはやっぱり適応力は高くて、こんな狂った世界になっても適応して生きていけるって。梓もきっと元気でやっていくさ」
『そうだね! ふふ、ふたりたびもわたしはすきだよ?』
「俺もさ、ナナ。久しぶりの2人だ。ゆっくり行こうか」
そう言って、英斗達は渋谷区を目指して旅をする。
英斗達が旅立った後、梓は元の施設に戻った。姿は勿論部分獣化であり、可愛らしい姿に、2本の角だけがトレードマークのように生えている。
彼女が変わったのは、容姿も勿論のことだが、一番は自信である。梓は今までより自分に自信を持っていた。施設の男の子達も、サイ子と呼んでいた梓の可憐な姿に心を奪われていた。
「梓ちゃん、一緒に遊びに行こうよ! 綺麗な花畑を見つけたんだ!」
「俺もゴブリン倒せるし、一緒に魔物退治に行こうぜ!」
とあの手この手で梓を誘う。
「やーだ! 芽衣ちゃん、いこ!」
「うん!」
芽衣の手をとって走り出す。男の子達から離れた後、芽衣は梓に尋ねる。
「ついていかなくて良かったの?」
「……先生はどうしてもしないといけないことがあったみたい。私はそんな人の足手まといになんてなりたくないもの。足だけ引っ張る女じゃなくて、助けてあげられるような女に、私はなりたい。いつか先生が困ったときに、颯爽と駆けつけてあげられるようなね」
と言って、ウィンクする。
「梓ちゃん、格好いいね」
「そう?」
「うん」
「けど、まずは身近な所からかな? 戦いたい子は沢山いると思う。そんな子が死ななくて済むように、私は頑張りたい」
「……私も戦いたい。私を助けてくれた梓ちゃんのためにも、自分が生きていくためにも」
「うん! 実践までまだまだ時間があるから、ゆっくり学んでいこ!」
これから、獣人の宴の孤児達は大人達からも戦い方を学び、精鋭として育っていく。
これで5章は終了です。ここまで見て下さった方全てに感謝を。本当にありがとうございます!
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