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卒業

 英斗は、芽衣を施設に送った後梓と空き家に戻った。


『えいと、ごめんね』


「いや、全ては元宮を逃した俺が悪い」


 と言ってナナの頭を撫でる。


「梓もありがとうな」


「ううん、色々ありがとう。私決めたよ! ここに残るね」


 梓は晴れ晴れとした顔で言った。それは今までと違い、悩みの晴れた顔であった。


「そうか……梓がここに残りたい、って思えたなら良かった」


 そう英斗は笑った。


「施設にはまだ私みたいに人間化できない子が沢山いるから、そんな子のために頑張りたいの。勿論まだ無理だけど、これから大きくなったときにね」


「そんな目標まで……」


 英斗は教え子の成長を再び感じていた。子供と言うものはやはり大人が思うより成長しているのかもしれないと。


「先生は、私が居なくて寂しいかもしれないけど、ごめんね?」


 と言ってウインクをする。それを見て英斗は苦笑いしかできなかった。


「じゃあ、卒業だな……。先生から可愛い教え子に、卒業プレゼントを贈ろうかね」


 そう言って、英斗はマジックバッグから小型の丸盾を取り出す。昔英斗が使っていたイグニスの盾である。先代は壊れてしまったが、ダンジョンで再び手に入れバッグに保管していた物だ。


「魔力を込めると、巨大化する。そこまで良いものじゃないかもしれんが、初めはこの盾で十分だ」


「ありがと、先生!」


 そう言って、嬉しそうに盾を抱きしめる梓。英斗に見られているのが恥ずかしかったのか


「けど、女の子へのプレゼントに盾って、先生……」


 と照れ隠しに言う。


「馬鹿、これは教え子へのプレゼントだからそれでいいんだよ」


「大事にするね!」


 そう言って、梓は笑った。おそらく明日は梓といる最後の日である。梓が眠るまで、ナナと一緒に梓と話していた。





 翌日、レオは獣人の宴(ビースターズ)のクランメンバーを呼べる限り全員呼び出し、高らかに告げる。


「ここ最近、殺人犯の疑いを旅人である月城英斗さんに向けていた。だが、それは大きな間違いであった! 犯人は我が台東ギルドの事務長である元宮柚希であった。確かに本人にも確認した。この疑いが流れたのは、俺が彼に無用の疑いをかけたためだ。月城さん、大変申し訳ない」


 と言って、英斗に深々と頭を下げた。一方クランメンバーは誰も元宮と思っていなかったのだろう、驚きでざわめいていた。


「えっ? どういうこと? 元宮さんが、なんで?」


「元宮さんがそんなことするわけない!」


「レオさん、どうしちまったんだ?」


 と皆動揺している。まだいまいち誰も信じられないようだ。


「いままで元宮に世話になっていた者も多く、信じられない者も多いだろう。……だが事実だ。今後、月城さんに殺人の疑いをかけることは止めてほしい。どうか皆頼む」


 と言って、クランメンバーにも頭を下げる。その声色から無用の罪をなすりつけていたことが分かったようである。皆、英斗に申し訳なさそうな顔をしていた。突然の色々な情報に皆混乱しているようであった。レオの話が終わった後、遠巻きに見ていた者達は英斗に頭を下げていた。

 英斗を馬鹿にして襲ってきたコアラ獣人の男は先ほどの声明を受け、顔を青くしている。コアラ男は英斗と目が合うと、すぐさま逃亡を始めた。


「ふぅ……」


 英斗は溜息を吐くと、ゴムボールを生み出すと、コアラ男目掛けて、投擲する。ゴムボールはコアラ男の頭に見事命中し、そのまま前方に倒れ込む。


「ぐぅ! こ、殺される!」


 と言いながら立ち上がり、必死で逃げていった。


「殺さねえよ別に」


 と英斗はのんびりと逃げる男を眺めていた。

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